マンションや土地、住宅などの不動産を売却する際に必要な経費の一つが、不動産会社に支払う「仲介手数料」。
不動産を売る時の費用で、占める割合が多いのが仲介手数料です。
例えば3,000万円の不動産を売る場合、仲介手数料は約103万円。
手数料の相場や計算方法をきちんと把握しておけば余計な諸費用を抑えられます。
今回はマンションや土地を売る際に必要な仲介手数料について、以下の5つを軸に解説。
- 不動産売却の仲介手数料に含まれる費用
- 不動産売却の仲介手数料の計算方法と相場
- 仲介手数料を値引かないほうがいいという事
- 「仲介手数料無料」に注意すべき点
- 仲介手数料を支払うタイミング
これから不動産を売ろうと考えている人は、仲介手数料の仕組みやルールについて目を通しておきましょう。
※タップすると該当箇所へスクロールします。
関連記事以下の記事では仲介手数料以外の不動産売却の費用についても詳しく解説しています。
Contents
不動産売却時にかかる仲介手数料とは?どんな費用が含まれるのか
不動産売却における仲介手数料は「成功報酬」で、仲介業者の利益となります。
不動産会社が売却先をみつけるための活動に対する"お礼"のイメージです。
不動産会社による売却支援の例
- 物件情報サイトへの広告掲載
- チラシの作成
- 購入検討者の物件見学の立会
- 売買契約書・重要事項説明書の作成
また仲介手数料には、上記のような不動産を売るための「通常の仲介業務で発生する必要費用」が含まれています。
そのため不動産が売れなければ仲介手数料を払う必要はありません。
仲介手数料に含まれずに別途料金が必要な活動もある
上述の通り、不動産を売る際の仲介手数料は「通常の仲介業務に必要な費用」。
仲介手数料を払うからといって、無制限に広告活動などをしてもらうことはできません。
以下の活動を行うには、別途料金が必要なので気をつけてください。
- 遠方の購入希望者のところへ交渉に出向く出張費
- 通常行わない特別な広告宣伝
売主の特別な依頼に基づいた広告費などの「実費」を、不動産会社は別途請求できます。
仲介手数料を払うからといって、「なんでもかんでもやってくれるわけではない」と覚えておいてください。
媒介契約の種類で仲介手数料が変わることはない
不動産売却における不動産会社との契約方法には以下の3つがありますが、契約方法で手数料は変わりません。
特徴 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の業者 への依頼 | できる | できない | できない |
売主による 直接取引 | できる | できる | できな |
不動産会社からの 活動報告の頻度 | 定めなし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
契約期間 | 定めなし (行政指導では3ヶ月以内) | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
専任媒介契約も専属専任媒介契約も他の業者へ依頼できないので、責任負担の大きさから仲介手数料が高くなるイメージがあると思います。
しかし専属専任媒介契約も専任媒介契約も、仲介手数料が高くなることはありません。
そもそも"媒介契約とは何?"という方は、下記で媒介契約の違いや仕組みを確認しておきましょう。
各契約方法のメリット・デメリットを解説しています。
売却する不動産によっては仲介手数料の領収書に印紙税がかかる
不動産を売る場合の仲介手数料の領収書には、売却する不動産によっては印紙税が発生します。
発行者 | 目的 | 課税区分 | 詳細 |
---|---|---|---|
個人 | 営業上 | 課税 | マンションや駐車場といった、業務用資産の売却に伴うの領収書 |
個人 | 非営業上 | 非課税 | 自宅や空き地などの、非業務資産の売却に伴う領収書 |
会社 | 原則として 営業上 | 課税 | 資産の売却に伴う領収書 |
このように「マンション・駐車場などの売却⇒課税対象」「自宅・土地などの売却⇒非課税」というわけです。
自宅を売るのであれば印紙税はかからないので気にしなくてOK。
もしマンションなどの売却を考えている方は、下記の印紙税額一覧表にも目を通してみてください。
不動産売却で仲介手数料はいくら必要?相場を早見表で紹介
不動産を売る際の仲介手数料は不動産会社が自由に決められます。
しかし法律上で仲介手数料の上限額は決められているので、違法な手数料を請求されることはありません。
仲介手数料の上限額
- 取引額200万円以下:取引額の5%以内
- 取引額200万円超〜400万円以下:取引額の4%以内
- 取引額400万円超:取引額の3%以内
後述からは仲介手数料の計算方法を紹介します。
仲介手数料の目安を知るために参考にしてください。
【計算方法】仲介手数料=売却価格×3%+6万円
不動産売却における仲介手数料の計算式が以下。
仲介手数料=(売却価格×3%+6万)×消費税率
例)3,000万円の自宅を売った場合
⇒(3,000万円×3%+6万)×1.08=1,036,800円
そして上記から分かるように、仲介手数料は消費税の課税対象。
仲介手数料を算出する際は、不動産売却価格を"税抜き"にするのが前提条件です。
【早見表】不動産売却価格ごとの仲介手数料の相場
以下は家やマンションを売却した際の仲介手数料の相場を計算した一例です。
大まかな手数料を把握するためにも参考にしてください。
売却価格 | 仲介手数料の上限 (税込) |
---|---|
500万円 | 226,800円 |
1,000万円 | 388,000円 |
1,500万円 | 550,800円 |
2,500万円 | 712,800円 |
3,000万円 | 1,036,800円 |
3,500万円 | 1,198,800円 |
4,000万円 | 1,360,800円 |
4,500万円 | 1,522,800円 |
5,000万円 | 1,684,800円 |
6,000万円 | 2,008,800円 |
7,000万円 | 2,332,800円 |
8,000万円 | 2,656,800円 |
9,000万円 | 2,980,800円 |
1億円 | 3,304,800円 |
5億円 | 16,264,800円 |
不動産を高く売るなら、仲介手数料の割引交渉をすべきではない
売却益を増やすなら、仲介手数料の割引交渉はしないほうがいいです。
たしかに不動産仲介の方法によっては、仲介手数料を割り引いてくれることもあります。
【専任媒介契約・専属専任媒介契約】
自社と契約してもらうために、手数料の値引きを受けてくれやすい。
割引しないと売主が手数料の安い他社へ流れるリスクが有る。
【一般媒介契約】
複数の仲介業者と契約できるので、値引きに応じてくれる業者は少ない。
自社と契約してくれる保証がないので、値引くメリットがない。
しかし専任媒介契約や専属専任媒介契約は値引きを受けてくれやすい一方で、仲介契約できるのは1社のみ。
1社に絞るということは、高く購入してくれる買主が見つかる可能性を狭めることにつながります。
筆者としては満額支払ってでも一般媒介契約で契約することを推奨します。
一般媒介契約(※)で複数の業者と契約すれば、幅広い買主にアプローチOK。
高く購入してくれる買主発見の可能性が高まります。
※一般媒介契約の場合、魅力的でない物件は専任や専属専任で預かる物件よりも後回しにされてしまうことも。
「売却価格」よりも「売却スピード」にこだわるなら、専任で任せた方が良いケースも多いです。
仲介手数料を数十万円値引くよりも高く売れる可能性を広げるべし
また実際に仲介手数料を値引いたところで、増える売却益はせいぜい数十万円程度。
仲介手数料を値引けない一般媒介契約で、高価格で不動産を買ってくれる買い主が見つかる可能性を広げるのが得策です。
たった5%高く売れるだけで、仲介手数料を20%値引いた時よりも売却益が多く残ります。
仲介手数料を値引いた場合
【前提条件】
- 専任媒介契約で自宅を3,000万円で売却
- 仲介手数料を20%値引き
【計算式】
- 仲介手数料=(3,000万円×3%+6万)×0.8(20%の値引き)=829,440円
- 手残り=30,000,000円ー829,440円=約2,917万円
一般媒介契約で満額払った場合
【前提条件】
- 一般媒介契約で自宅を3,150万円(5%増し)で売却
- 専任媒介契約より5%増しで購入してくれる買主が見つかる
【計算式】
- 仲介手数料=(3,150万円×3%+6万)=1,005,000円
- 手残り=31,500,000円ー1,005,000円=約3,049万円
このように一般媒介契約で高額買主が見つかれば、手数料を満額払っても手残りは132万アップ。
仲介手数料をチマチマと値切るよりも、高く購入してくれる方を探すほうが効果的です。
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(関連記事:土地を高値で売るために空き地売却経験者が実践したたった1つの裏ワザ…)
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一般媒介契約を結ぶ前に大まかな売却価格が分かるので、高値の売却を仲介してくれる業者を絞りやすいです。
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不動産売却では「仲介手数料無料」の業者は注意すべき
不動産会社の中には「仲介手数料無料」を謳う業者も最近では増えてきています。
一見お得感がありますが、無料の業者の利用は避けるべきです。
- 他社の不動産仲介会社と協力せずレインズ(※)に登録しない
⇒自社の買主にのみに不動産を紹介する - 広告費を割かれる可能性がある
「仲介手数料無料」の落とし穴
仲介手数料が無料の不動産はレインズなどに登録しないケースがあります。
自社の買主だけに不動産を紹介することで、利益を独り占めしようという魂胆です。
また広告費を割かれるといった、活動範囲に制限がかかる可能性も…。
「仲介手数料の安さ=見込み客(買い主)を捨てる」ということに直結してきます。
レインズとは不動産流通機構が運営している、不動産情報を提供するシステム。
レインズに登録することで、不動産情報を業界全体で共有できます。
「手数料無料でレインズに登録しない」業者と契約すると、他の売主に不動産を宣伝できません。
不動産売却の仲介手数料が無料の仕組み
不動産を売る際の仲介手数料が無料・半額にできるのは、上述したような「買主の独占」を含む3つのからくりがあります。
- 自社の買主のみに紹介し利益を独占する
- 両手仲介(売却・販売の両方を担う)で、購入者からのみ手数料を受け取る
- 手数料を半額にして、売主・買主の二者から最低限の手数料を受け取る
そもそも不動産会社は約31万社あり競合が激しい世界です。
競合他社が多いので、仲介手数料の高さで顧客に逃げられる可能性は大。
ですので「売主は無料、買主には手数料を請求」「手数料を売主・買主の半々で払ってもらう」のように、少しでも集客につなげたいわけです。
自分で直接取引すれば仲介手数料は無料どうしても仲介手数料を無料にしたいなら、仲介業者を利用せずマンションや土地を売る方法もあります。
しかし業者を通さないと宣伝広告や税金回り、契約書や各種書類の作成を全て売主が行わないといけません。
専門的な知識を要しトラブルの原因にもなります。
不動産売却のノウハウを熟知していないという方は、上述のように高く買ってくれる買主を探すのが得策でしょう。
手数料を無料にして「仲介業者が不動産を買取る」ケースもある
本来仲介業者は売主の不動産を他社、または自社の買主に「この不動産どうですか?」と宣伝・販売するもの。
しかし手数料無料の業者の中には、自社であなたの不動産を買取ろうとする業者もあります。
自社買い取りでは、売却相場価格の70%~80%引きで購入されるケースがほとんど。
時価総額3,000万円の自宅を、2,100万円~2,400万円ほどで買取ってくれるイメージです。
自社買取りなら買主を探さず即売却できますが、利益率は低くなります。
仲介手数料の支払い時期は、原則「不動産が売れた」とき
仲介手数料を支払うタイミングには大きく2パターンがあります。
- 決済引き渡し時に払う
- 契約時に仲介手数料の半額、売却後に残りの半分払う
不動産売却時の手数料は上述のとおり「成功報酬」。
ですので原則として決済引渡し時に支払います。
契約時と売却後で分割して払う場合もありますが、複数の業者から購入希望者を見つけるなら売却後に一括支払いするのが賢明です。
また契約後に半額支払っても、売却まで業務を全うしてくれるという保証はありません。
「高く売る・リスクを回避する」ためにも、売却後の支払いを希望しましょう。
仲介手数料の値引きよりも、不動産を高く売ることに努める
今回ご説明したように不動産売却時の仲介手数料は、宣伝広告といった仲介業務で発生する費用。
相場や計算方法、仕組みを理解しておけば無駄な費用を払わずに済みます。
不動産売却時の仲介手数料まとめ
- 媒介契約の種類で手数料は変動しない
- 計算方法は《仲介手数料=売却価格×3%+6万》
※仲介手数料は課税対象です。 - 手数料を満額払って一般媒介契約したほうが利益が高い
※専任・専属は値引きされやすいが、買主を絞り込む要因になる。 - 「手数料無料」は活動範囲に制限がある場合もある
当記事で紹介した計算方法を元に、売却価格がわかった際は仲介手数料を算出してみてください。
また不動産の売却時には手数料だけでなく、税金もかかります。
手数料の仕組みを理解された方は、不動産を売る際の税金も合わせて確認しておきましょう。
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