(実例)不動産売買でのトラブル
~トラブルの回避策や相談先を紹介~
今回は不動産営業の経験を持つフリーライター「花 惠理」氏にご寄稿いただきました。
テーマは「不動産売買のトラブル事例とその対処法」です。
不動産トラブルが一番起きやすいのが売買を行う場面。
もし自分が不動産売買を行う時に何かトラブルに巻き込まれたら…と考えると不安ですよね。
そんな方のために
- 実際のトラブル事例4つ
- トラブルを回避する対策
- トラブルに合った時の相談先
について多数の不動産メディアでの寄稿経験を持つ花氏が解説!
今後不動産売買に関わる可能性のある方は必読です。
はな え り
花 惠理氏
フリーライター
地方国立大学を卒業後、不動産会社や住宅メーカーの不動産部に勤務。
不動産賃貸・売買契約の他、社宅代行、宅地造成など、不動産の業務に携わっていました。
現在は、不動産や金融関係の執筆をするライターとして大手メディアなどに多数寄稿。
初心者にもわかりやすい言葉で解説しています。
HP:https://www.erix.work/
TwitterID:@writerERI
不動産売買の取引では数百万円~数千万円、場合によっては数億円以上の大きな金額のやり取りが行われています。
大きな金額の動く取引ですから「万が一トラブルが起こってしまったら…」と不安に思う人がいるのではないでしょうか。
そこで今回は不動産売買において実際にあったトラブル事例をご紹介します。
トラブルにあわないための対処法も解説しますので、不動産取引を行おうと考えている人はぜひ参考にしてみてください。
不動産トラブルで多い取引態様は「売買」
売買時のトラブルは全体の7割
平成29年度の不動産トラブル全体の約7割が売買時(代理・仲介含む)に起きているというデータが出ています。
(参考:『宅地建物取引業法施行状況調査(平成29年度)の結果について』国土交通省 2018年10月)
つまり不動産取引では賃貸より売買でのトラブルが圧倒的に多いということです。
この背景には
- 「不動産売買」という取引で扱う金額の大きさ
- 権利関係や契約内容などの複雑さ
などがあることが考えられます。
トラブルに巻き込まれないためには、不動産の基本的な知識を持っておくことが重要だといえるでしょう。
実際にあったトラブル事例4つ
トラブル事例を知ることで、同様のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
ここでは、私が実際に見聞きした以下のトラブル事例4つをご紹介します。
- 土地の境界トラブル
- 引渡し後のトラブル
- 特約に関するトラブル
- 宅建業者が売主となる際のトラブル
①土地の境界トラブル
- 宅地造成の業者が行った分譲地
- 区画整理の土地
などであれば、土地家屋調査士が境界を示していることが多い=問題は起こりにくいでしょう。
しかし昔から存在する土地は第三者から見て境界が曖昧なことが多いです。
ご近所同士の口約束だけで境界を決めている場合がありますが
- 相続で代替わり
- 売買による所有者の変更
などにより近隣住民が入れ替われば、境界位置の認識に食い違いが生まれトラブルに発展する場合が多いです。
【土地境界に関するトラブル(例)】■トラブル対象:隣地との境に作られた塀
■論点:
- 塀がどちらの敷地にあるか
- 塀の中心が境界なのか
■トラブル内容:万が一塀が壊れた場合の対応(どららがどのような責任を取るべきか)
不動産売買契約において、基本的には売主に境界明示義務があります。
引渡し後のトラブルを防ぐために、必ず隣地との境界を確認しておきましょう。
②引渡し後のトラブル
中古戸建を購入した人の事例です。
中古戸建の引渡し後、雨漏りがあることが発覚し修繕が必要に。
しかし売主は「引渡し後のことは知りません」と返答しトラブルに発展してしまいました。
引渡し後のトラブルでは契約の内容を確認しましょう。
しかし、不動産に馴染みのない人は契約書のどの項目を確認して良いかわからないかもしれません。
今回の例で確認すべきなのは「瑕疵担保責任」に関する項目です。
詳細は後述の「不動産取引のトラブルにあわないための対処法」をご覧ください。
③特約に関するトラブル
不動産の購入にあたり、金融機関のローンを組む予定だった人の事例です。
不動産売買契約を締結した後に金融機関の審査が通らず、融資が下りませんでした。
ローン特約を結んでいましたが解除期限までに連絡をしなかったため、仲介業者や売主から「契約を解除するのであれば、手付金は返還できない」と言われてトラブルになりました。
「ローン特約」とは「ローン特約」とは、万が一融資が通らなかった場合に契約を白紙解除できる特約です。
ローン特約による解除の場合、売主に渡した手付金が返還され不動産売買契約そのものがなくなります。
ローン特約には解除期限が設けられていることが多いので、契約時にきちんと確認しておきましょう。
④宅建業者が売主となる際のトラブル
宅地建物取引業者が売主の土地を購入する契約をした人の事例です。
様々な事情から契約後に購入を断念することになりました。
手付放棄による解除を行おうとしたところ「手付解除の期限が過ぎている」と言われ、トラブルになりました。
しかし宅建業者が売主の場合、一般個人が売主の場合とは異なり宅建業法により制限が課せられています。
つまり、今回のケースでは宅建業者が売主の場合は、手付解除に期限を設定することはできません。
契約の際、売主について確認しておくことをおすすめします。
不動産取引のトラブルにあわないための対処法
誰しも不動産取引でトラブルに巻き込まれたくないものです。
ここでは、不動産取引においてトラブルにあわないための対処法について具体的に解説します。
隣地との境界がわかる書類を確認する
不動産売買契約において、基本的には売主に境界明示義務があります。
不動産を売却する際は、地積測量図など隣地との境界がわかる書類を準備しましょう。
しかし、中には今まで1度も測量を行っていない土地もあります。
この場合は専門家(土地家屋調査士)に依頼し、近隣の承諾を得て土地の測量を行う対処をしましょう。
不動産を購入する場合も
- 隣地との境界がわかる書類
- 現地の境界を示す杭
など、これらを確認してみてください。
境界が曖昧な場合、隣地所有者とトラブルに発展してしまう可能性があります。
境界の確認は、事前にトラブルを回避する上でとても有効です。
瑕疵担保責任の有無や期間を確認する
上記のトラブル事例でもご紹介した「瑕疵担保責任」は、特に引渡し後に重要となる項目です。
「瑕疵」とは、簡単にいえば「欠陥」のこと。
つまり瑕疵担保責任とは、売主が買主に対して負う隠れた欠陥の責任ということです。
宅建業者が売主の場合は瑕疵担保責任の期間は2年以上と決められていますが、そうでない場合は当事者間で決めることが可能。
したがって個人間売買では「売主は瑕疵担保責任を負わない」とする特約は有効になります。
上記の事例のように引渡し後に雨漏りなどが発覚したケースでは、瑕疵担保責任の有無や期間が重要です。
トラブルを防ぐために、契約書に記載されている「瑕疵担保責任」に関する内容を十分に納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
2020年4月の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わる予定です。
改正前と改正後では、買主側の取ることができる法的手段や期間などに違いがあります。
いずれにせよ後の項目でも解説するとおり、契約書類をよく確認してください。
不明な点があれば随時質問することが大切でしょう。
契約書類をよく確認する
上記の瑕疵担保責任だけでなく、契約時に交わす書類には重要なことが書かれています。
きちんと内容を確認して、納得した上で契約することが大切です。
契約時に取り交わす書面は重要なものばかりです。
それぞれの書面の特徴を知っておくと良いでしょう。
宅建業者が売主の場合は制限がある
上記のトラブル事例でも解説しましたが、宅建業者が売主の場合は宅建業法により制限が課せられています。
宅建業者が売主の場合の制限例
- 一定の条件を満たせばクーリングオフが適用される
- 「売買代金の20%」超えの手付金は受け取ってはいけない
- 買主の手付解除を制限してはならない
- 一定額以上の手付金等の受取では「保全措置」を講じなければならない
- 瑕疵担保責任を引渡し日から「2年以上」負わなければならない
など。
契約内容が買主に不利な内容となっていないか、しっかり確認しましょう。
疑問に思うことがあれば質問する
特に不動産初心者だと、取引時に多くの不明点が出てくるのではないでしょうか。
売主・買主双方が納得した上で契約を結ぶことが大切です。
疑問に思うことがあればそのままにせず、不動産会社の担当者や売主に質問しましょう。
不動産トラブルに巻き込まれた時の相談先
万が一、不動産トラブルに巻き込まれてしまった場合はどうしたら良いでしょうか。
ここでは相談先についてご紹介します。
①不動産会社の所属する団体(宅建協会など)
通常の不動産取引では、不動産会社が関わっていることがほとんどでしょう。
不動産会社のトラブルに巻き込まれてしまった場合、宅建協会などの団体の窓口に相談してみてください。
②公的機関(自治体など)
- 自治体の相談窓口
- 全国の消費者センター
- 国民生活センター
- 法テラス
など、公的機関に相談する方法があります。
消費者センター・国民生活センターではリフォーム詐欺や購入時の手付金など消費生活全般の問い合わせに応じています。
③各種トラブルの専門家
- 土地家屋調査士…土地の測量関係のトラブル
- 司法書士・弁護士…権利関係のトラブル
- 税理士…税理関係のトラブル
など、トラブルの原因に応じて各専門家へ相談すると良いでしょう。
トラブルにあわないよう事前に対処法を知っておこう
不動産売買でトラブルにあわないためには、不動産の基本的な知識や対処法を知っておくことが大切です。
特に契約書の内容は重要なことばかりなので
- 必ず理解した上で契約を締結
- わからない点は十分に把握できるまで質問
をするなど、以上の点を意識してください。
トラブルを未然に防いで、当事者全員が気持ちの良い取引ができるよう努めましょう。
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