勤務医をしながら不動産も!本業と副業両立のコツ
~効率的な管理方法と物件えらび~
今回は、放射線科医師でありながら不動産投資をされている兼業投資家「ふくろう」氏に寄稿いただきました。
本業がある方が不動産経営を始める場合
- 土日も休む時間が無くなりそう…
- 手間かけずに空室防止ができるのか分からない…
- 兼業でも継続的に利益を生むにはどうしたら…
など、専業大家さんと違って時間をかけずにより効率的な経営の悩みがつきません。
本記事で、実際に大学生時代から不動産投資の経験を積まれてきたふくろう氏に極意を学びましょう!
ふくろう氏
放射線科医師・不動産投資家・株FXブロガー
大学生在学中に1戸目の区分マンションを取得してから、徐々に拡大。
31歳で不動産所有・管理法人を設立。
現在、区分・1棟マンション/アパート/戸建/1棟ビル/シェアハウスなど、計54戸を賃貸運営中。
放射線診断専門医・不動産賃貸業・株FXブロガーの3足のわらじを履いて奮闘中。
ブログでは、年利15%を目指せる株・FXの手法を紹介し、運用実績を公開しています。
ブログ:https://fxdeshigotoherasu.com/
Twitter:@tk2cafe
「本業に加えて不動産で副収入を得て、経済的にも気持ちにも余裕を持ちたい!」
と思って不動産を始めたものの、土日は不動産の対応で大忙しで次第に家族からは相手にされなくなり…。
不動産を始めたがために自分の時間や家族との時間がなくなってしまっては、何のために不動産を始めたのか分かりません。
兼業大家は、使える時間に限りがあります。
本稿では、勤務医と不動産経営を両立する私が実践している「本業・不動産両立のコツ」を紹介します。
自宅付近で効率的な不動産経営を
自宅近くで情報を正確に素早くキャッチ
私は、自宅から電車あるいは車で1時間以内の物件に絞って購入。
得意なエリアであれば相場観をフルに活用。
市況による相場利回りや相続案件・売り急ぎなどの掘り出し物にすぐに気が付けるようになります。
物件の状況確認・修繕計画がスムーズに進行出来る
自主管理を行う専業大家なら
- 定期的な物件巡回(清掃状況・異常の確認)
- 退去立会い
- リフォーム計画と施工会社への指示
- 設備故障の対応
など、物件に行くタイミングは多くあります。
兼業のサラリーマン大家は、管理会社に物件管理を委託するのが一般的。
しかし少なくとも退去後の部屋を確認、管理会社とのリフォーム相談・指示は行うべきです。
更に1棟建物であれば年1~2回は物件の状況を確認し、物件の異常の有無、外壁・屋上などの劣化状況を確認して長期修繕を考えます。
物件が自宅から近いと、これらの対応に時間を取られることはありません。
また“物件に行かず管理会社に丸投げする”ことも無くなるので、常に物件の情報を把握できて安心です。
Tips1棟建物の場合は日常清掃を清掃会社に依頼することが一般的。
私は清掃会社と直接契約して清掃状況・物件異常の確認を写真付きのメールで報告を受け、物件巡回の回数を減らしています。
管理会社との信頼関係作りが大切
管理会社をしぼってお得意様に
エリアを集中させると、管理会社を少数に絞ることができます。
私は全ての物件の管理を自宅近くの管理会社に委託しています。
物件ごとにその地域が得意な管理会社に委託するのが一般的ですが、一つの管理会社に委託する戸数は少ないのでなかなかお得意様になれません。
管理会社を少数にして物件を集中させるとお得意様になり
- 最優先で動いてもらえる
- リフォーム代の上乗せが0あるいは実費程度まで下がる
- スタッフ全員とLINEでスムーズなやり取り
- 賃貸募集方法に注文を付けられる
など、多くのスケールメリットがあります。
管理報酬で優先度を高めてもらう
一般的な管理会社への報酬は「家賃の5%+消費税」。
しかし管理業務は入居者とのやり取りや現地急行も多く、月々の管理報酬のみでは利益が多くありません。
そのため、管理会社は
- リフォーム手配・設備故障対応の手数料
- 入居契約に係る契約事務手数料の授受
- 入居者からの鍵交換代
- 家財に対する保険・賃貸保証の代理店報酬
など、管理報酬以外にも収入があります。
上記を自分で行えば経費削減や多少の利益につながりますが、その分管理会社の利益は少なくなります。
管理会社からすれば報酬が少ない大家の優先度は低くなることは想像がつくでしょう。
管理会社にある程度の報酬を受け取ってもらい、管理会社と良好な関係を築くことをオススメします。
管理会社の利益確保を考える大家は大事にしたくなる存在。
管理戸数が増えるごとに優先度を上げてくれます。
工事発注も管理会社を通じて行うと、都度の相見積もりや日程調整の手間が省け、コツコツ発注して施工会社の得意先となれば次第に単価も下がります。
迅速なやり取りで現地訪問回数を最小限に
実績を積み重ねて管理会社との信頼関係ができれば、リフォームなどの各種対応を“即時”に“必要最低限の手間で”行うことができます。
例)
- 退去後に「クリーニングだけで大丈夫」と言われた場合
…クリーニングのみ依頼 - 「壁紙交換と窓の補修が必要」と言われた場合
…LINEのやりとりで一連の作業を完結(写真で確認→見積もり依頼→発注→完了確認)
大家自身が現地に行く回数を減らすことができます。
区分マンションをオーナーチェンジで購入する場合などは、退去がなければ購入から売却まで一度も物件に行かないことも可能です。
管理会社を絞ると書類や窓口が少なくなり、帳簿付けなどの手間が減らせることも兼業大家の実務では大きなインパクトです。
ただ、私は良好な信頼関係を築けるまでに約10年掛かりました。
最初のうちは複数の管理会社に物件を分散し、原状回復・リフォームは相見積もり。
セルフリフォームをして、知識の補強や工事の相場観を養いました。
今でも外壁修繕・屋上防水、スケルトンからの内装など大規模なものは、自分でも相見積もりを取得して施工会社を選定しています。
効率的な経営方法-①賃貸募集を依頼する
賃貸管理業務・賃貸募集の依頼は別物
管理会社に
- 「賃貸管理業務」を依頼
- 「賃貸募集」を依頼
することが一般的です。
しかし管理会社には管理のみお願いし、賃貸募集は他社と契約することもできます。
「賃貸管理業務を依頼」・「賃貸募集を依頼」することは別物ですが、あまり知られていないのが実情です。
管理会社と客付け業者の関係について分かりやすく解説している本が少ないことが原因だと考えられます。
賃貸募集の依頼方法
賃貸募集を依頼する際、不動産屋とは専任媒介契約・一般媒介契約のいずれかで契約するのが一般的。
それぞれの特徴は以下の通りです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | |
レインズへの登録義務 | 無 | 有 |
募集業務状況の報告 | 無 | 2週間に1回 |
複数業者への依頼 | 可 | 不可 |
自己発見取引 | 可 | 可 |
専任媒介契約
専任媒介契約は一つの不動産屋のみと契約可能で、その不動産屋が窓口になります。
契約した不動産屋がレインズに掲載後、情報・図面を見た全ての賃貸不動産会社が入居者を紹介することが可能です。
またアットホーム・ホームズ・SUUMOなどのエンドユーザー向けのポータルサイトに掲載されれば、これを見た入居希望者と直接連絡を取ります。
一般媒介契約
対して、一般媒介契約は複数の会社に依頼できるのが最大のメリット。
しかし、レインズへの登録義務はないため「業者間ポータルサイト」に登録されないことも…。
そうなれば他の会社の目に触れず、逆に間口を狭めることになります。
複数社と一般媒介契約を結ぶ際には、少なくともレインズ・アットホームに登録してもらうよう手配する必要があります。
※一般媒介契約ではレインズの登録義務はありませんが、登録することに問題はありません。
効率的な経営方法-②予算設定で空室を防止
賃料設定と広告料で時間を節約する
大家向けの書籍にある「最寄り駅やターミナル駅の不動産にすべて営業をした」などの記載は、一般媒介契約を想定しています。
しかし、専任媒介契約をしている不動産会社の許可があれば図面を持って営業すること自体は可能です。
ただし兼業大家が空室の度に何十件もの不動産屋に営業活動をするのは現実的ではありません。
- 不動産屋回り不要ですぐに決まる賃料で募集
※それで十分な利益が出る価格で物件を購入する。 - 適切な広告料(AD)を支払う
ことにより、時間を節約します。
不動産会社側の優先順位は広告料(AD)に比例する
大家から客付けをしてくれた不動産会社に賃料1か月分を広告料(AD)として渡すのが通例(※)です。
※地域差あり。
私は管理会社と専任媒介契約を結び、他の客付け業者用に賃料1か月分の広告料(東京・埼玉エリアの相場)を用意しています。
客付け業者としては
- 自社所有物件・サブリース物件
- 自社管理物件
- 他社物件(ADあり)
- 他社物件(ADなし)
の順に利益が多くなるため、一般的にはこの順番で物件を決めていきます。
客付け業者用にADを用意すると、エリア内の多くの不動産屋が優先的に物件を案内してくれるのでインパクト大です。
- 管理会社が直接入居者を決めた場合
⇒「契約事務手数料」として賃料1か月分 - 他の客付け業者が決めた場合
⇒その会社に賃料1か月分、管理会社に1か月分 計2か月分
を支払っています。
「損して得取れ」の発想で早期に空室を埋めることが重要です。
このような工夫で、入居率は平均95%以上を保っています。
手間をかけずにキャピタルゲインを実現する投資物件
資産価値を担保できる物件を見つける
不動産投資というと利回りに注目しがちです。
しかし、利回りが良くても土地代が安いなど「本質的に価値が低い物件」はゼロに向かって減価していくもの。
郊外の新築1棟RCアパート・マンションが典型的な例で、新築時から築年とともに積算価格は減っていきます。
一方、買った価格と同じか高く売れる物件を購入して、数年間保有(例:5~10年間)。
その後に売却を繰り返すことにより純資産を増やすことは可能です。
資産価値が下がらない物件は数多くありませんが
- 売り急ぎ物件(※)を安く購入
⇒ある程度保有した後に相場で売却 - 市場の歪みを利用して利益を出す
の2点が狙い目です。
※相続等で早くに物件を売却したい場合。
「区分マンション・戸建・1土地1建物1テナント物件」であれば、上記のような物件を探すことが比較的容易です。
1つの物件で賃借人が一人のみで退去後に空室として売却ができるというメリットがあります。
また1棟アパート・マンションの管理と比べて手間もかかりません。
区分マンション-価格の変動・相場の点で有利
区分マンションは土地の持ち分が少ないため、賃料・利回りから売買価格を逆算する収益還元法で値付されることが多いです。
そのため築古になっても、ある程度の価格で下げ止まります。
また、近隣の物件と比較し価格相場を掴みやすいことがメリット。
物件情報を見続けることで売り急ぎなどのお得物件に気づくことができます。
1棟アパート・マンションでは高価格な修繕が突発的に必要です。
しかし区分マンションでは修繕積立金から支払われ、基本的には専有部分の修繕費を見込んでいれば問題ありません。
ファミリー向け間取りがオススメ
区分マンションの中でもファミリー向けの間取りの場合、賃貸中の物件なら空室よりも安く買えることがあります。
空室の区分マンションは実需(自分で住む)の購入希望者がいる一方、賃貸中だと投資家しか購入しないからです。
この市場の歪みを利用し、収益還元法で値付けされた賃貸中のファミリー物件を安く購入して賃料収入を獲得。
退去しても実需向けに高く売却するという戦略が考えられます。
実需への売却を念頭に購入する場合には、住宅ローン控除の対象である「登記簿上50㎡以上の物件」を選ぶとよいでしょう。
ただし、オーナーチェンジ物件では中が見れないので退去後(ボロボロで)リフォーム代がかさむというリスクはあります。
戸建 -土地の出口戦略向き
戸建は賃借人一人が退去すれば土地として売却ができるので、土地としての出口も現実的です。
ファミリー区分マンションと同様に、収益還元法により安く値付けされた物件を、退去後に実需向けに高く売れることもあります。
土地値による資産価値の下支えもあり「下値」が限定されます。
土地値というと路線価というイメージが強いですが、売却を考えるときは実勢価格が重要です。
都市圏では「実勢価格>路線価」が一般的ですが郊外では逆転することも珍しくありません。
購入前に実勢価格を調査する必要があります。
戸建も1棟物に比べると修繕の見込みが立てやすく、また大きな修繕が必要になる前に売却してしまうというのも手です。
1土地1建物1テナント物件 -土地売却と賃料収入を確保
賃貸中であることにより価格が下がる“市場の歪み”を用いた手法ですが、区分マンション・戸建の手法と比べて規模が大きいです。
実際に私が2018年に購入した物件を紹介します。
【物件情報】■立地:都内の乗降者数約3万人の駅近・幹線道路至近
■土地坪:土地約90坪(整形地)
■構造:平成築・重量鉄骨造
■建物の種類:延床面積約100坪の元工場
この土地の実勢価格は約13,000万円で、1棟全体を1テナントに月額賃料65万円で賃貸中でした。
当初の売り出し価格の13,000万円では表面6%で魅力がありません。
1年近く売れないのを観察した後に内見。
10,400万円と大幅指値をして多少戻されたものの、10,900万円で購入することができました。
表面利回りは7.16%ですが、1土地1棟に1つのテナントのみでテナント退去後は土地として売却が可能。
土地として2,100万円高く売れると、土地の暴落がない限り利益が残せる物件です。
25年ローンで返済比率は低くないものの
- 返済額:約40万円/月額
- キャッシュフロー:約25万円/月
と、賃貸継続でも十分収入を確保することができます。
建物が工場仕様なので修繕費用があまり掛からないこともメリットです。
このような物件に巡り合うことはなかなかありませんが、ライバルが少ないので狙い目です。
以上、サラリーマン大家が時間・手間を掛けずに不動産投資を行うコツについてまとめました。
読者の皆さまの参考になれば幸いです。
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