ホームステージング
~物件の質と売却益を高める方法とは~
今回は都内の物件を26棟220戸所有する不動産投資家、「山井ダイスケ」氏にご寄稿いただきました。
今回取り扱うテーマは「ホームステージング」についてです。
不動産投資のかたわら、ホームステージング事業を展開する山井氏に
- ホームステージングとはどういうものか
- ホームステージングの重要性
- 実際に行うときのコツ
についてご解説いただきました。
まだまだ知られていないものの、成約率アップに効果のあるホームステージング。
頭一つ抜き出た不動産経営を目指す方は注目の内容です。
やまい だいすけ
山井ダイスケ氏
不動産投資家
2011年から不動産投資を始め、所有物件はすべて東京都内。
テナント、シェアハウス、築古再生、新築など、さまざまなタイプの不動産投資を行う。
現在は家賃年収2.6億、26棟220戸を所有。
不動産賃貸業のかたわら、ホームステージング事業も経営している。
専業大家が集まる情報交換会を定期的に開催。
Twitter:@Yamai_Daisuke
ホームステージングについて
「ホームステージング」=物件を装飾・演出する販促方法
ホームステージングとは物件を家具や小物でモデルルームのように装飾・演出する販売促進手法です。
1970年代のアメリカ発祥で、欧米では一般的に物件売却時はホームステージングを行います。
日本でも大手不動産業者が数年前から開始していますがまだ一般的ではありません。
不動産業者からの依頼が大半
「ホームステージング=空室対策」というイメージを持つ不動産オーナーさんも多いでしょう。
しかし、ホームステージングの依頼は不動産業者からのリピートが大半です。
不動産業者が営業にかける時間は短いため、早く・高く物件を売るためにホームステージングが必要だと評価して頂けていると思います。
ホームステージングは成約率向上に繋がる
「一般的でないからこそ差別化できる!」と考え、私は2013年から賃貸でホームステージングを導入しました。
初めは思うような効果が出ない時期もありましたが、今ではホームステージングを核として賃貸経営を行っています。
あまり理解してもらえませんが
- 管理業者に管理費を払っていない
- 客付業者へ営業していない
という状況でも毎年の年間稼働率は98%~99%をキープしています。
これはホームステージングによって成約率が大幅に向上したからできることです。
空室解消に必要な要素
ニーズにマッチさせるー客付業者・入居希望者
不動産オーナーさんからホームステージングによる空室対策を相談されることがあります。
私は客付業者での営業経験もあるため、空室が埋まらない仕組みについては把握済み。
しかし、ホームステージングの相談にくる方のほとんどは空室が埋まらない原因を理解していません。
空室の要因は
- 客付業者
- 入居希望者
にあります。
当たり前ですが、客付業者が仲介して入居希望者に契約してもらうことで空室は埋まります。
しかし、どちらかの物件ニーズから外れてしまうと空室は埋まることはありません。
【不動産業者のニーズ】
- 単価(家賃)、広告手数料(AD)が高い
- 物件の質が良く、成約率が高い
- できれば専任、もしくは競合する募集業者が少ない
【入居希望者のニーズ】
- 家賃/初期費用が安い
- 物件の質(立地含む)が高い
ニーズの違いが意識できていないと「自分の物件がポータルサイトに掲載されてない」ということが起こります。
物件の質を上げる
空室対策で物件の質を上げることはとても重要です。
実際にホームステージングを本格導入してからこの考えは確信に変わりました。
不動産オーナーの方はあまりご存じないと思いますが、建築系の管理業者やサブリース業者は客付業者に空室リストを定期的に配信します。
客付業者は、不動産オーナーのものよりも上記業者の物件に対して安心感を抱きやすいです。
その主な理由としては
- 審査基準が明確
- 物件の質が一定でどれも綺麗
- ADなどの金額面も標準以上
といったものがあります。
(実際に私が客付営業していた時にも、このリストから物件を紹介することが多かったです。 )
「質は間違いないし、ADも出るから案内しやすい。」
「まずは業者のリストに空室がないか確認してみよう。」
客付業者にここまで認知させることができなければ、スムーズに入居希望者へ自分の物件情報を流せません。
不動産オーナーはまず自分の物件の質を高めることが、入居付けの早道になります。
オーナーの認知度を高めても意味はない
不動産オーナー向けの書籍には
- 週1で店に顔を出す
- 缶コーヒーやカップラーメンを配る
- 決めてくれた担当に現金を渡す
などの空室対策が書いてあることが多いです。
これらは客付業者にオーナーを認知させる方法で、確かに効果はあるため当初は私も真似していました。
しかし数年経つと客付業者の担当者が退職や社内異動で変わるのも珍しくありません。
リーシングが周り出したら、店長やエース担当が変わってしまう場合もあります。
こうなると空室が出るたびに業者周りを1からやり直す必要があるのです。
さらに次に来た担当が全くダメという場合も…。
同じ立場で働いていたものとしては、担当の対応にもどかしさを感じる部分もありました。
ホームステージングのメリット
「物件のインパクト」を出せる
空室リストの配信を不動産オーナーが真似しても、業者より物件数が少ないため非効率です。
そんなサブリース業者と不動産オーナーは競争しています。
競争を制するならば、業者に真似できない”インパクト”が必要です。
そのインパクトを出すため、私はホームステージングを選択しました。
ここ2,3年は客付業者への営業は一切していませんが、去年も年間稼働率は99%台をキープしてます。
物件の質の向上で売却益を最大化できる
家賃と物件の質、このバランスさえあっていれば自然と空室は埋まります。
- 適度なリフォーム/リノベーションを実施
- 家賃を相場に合わせる
ことされすえば問題ありません。
しかし、「売却」まで考えたときに「ホームステージング」が重要になってきます。
ホームステージング依頼の大半は不動産業者からのリピートで、「売却」に必要であると評価して頂いています。
例えばホームステージングやリフォーム/リノベーションによって、物件の家賃を3,000円上げて利回り10%で売却したとしましょう。
この時、家賃を上げた場合とそうでない場合とでは売却価格は36万円も違います。
(家賃を上げた物件が仮に10部屋あれば、360万円も売却価格が変わってきます。)
収益系の不動産業者は“家賃を下げると売却価格が下がる”ことを熟知しているので
- ADを増やす
- フリーレントをつける
など、ほとんど家賃を下げません。
反対に、不動産オーナーは「目先のインカムゲイン>物件の売却」と考えているケースが多いです。
例)家賃3,000円アップしたい場合…
■リフォーム代:10万円
■回収年数:3年
「3,000円のためにリフォーム代を払ったら、回収に“3年も”かかってしまう…」
つまり売却益を最大化するため、“安易な家賃競争”ではなく“質で勝負する”べきだということです。
上記を理解している不動産会社は「リフォーム/リノベーション&ホームステージング」を選択します。
所有物件で家具の使い回しができる
中にはリフォームやリノベーションをするお金がない、という方もいると思います。
部屋のサイズにもよりますが、10部屋リノベーションすれば1,000万を超えてしまうこともあるでしょう。
その点、ホームステージングでは家具や小物の使い回しができます。
- エアーベッド
- 折りたたみできるテーブル
などの分解ができる家具を利用すれば、1人で行うことも可能です。
私の会社でも1K~1LDKの部屋は女性スタッフが1人で行っています。
ネット上に女性1人でも運べる家具はたくさんありますから、家具選びを間違えなければまず大丈夫です。
時間や人を使う能力がある方であれば、ホームステージングをしない理由は無いと思います。
ホームステージングを行う時のコツ
ホームステージングの行う際のコツをご紹介します。
- 何度も分解ができる家具を使う(チェア、テーブルなど)
- 一人でも運べる家具を使う(ソファー、TVボード、エアーベッドなど)
- アクセントカラーは小物でつける
①何度も分解できる家具を使う
ホームステージングでは家具の使いまわしが絶対原則のため、何度も分解できる家具を使うことが重要です。
ホームステージングする際に家具を新しく購入する人は全体の10%もいません。
例えば、木部にネジを直接打ち込むタイプの家具は分解する度に強度が低下してしまいます。
使いまわしのことまで考えて、間違っても購入しないようにしましょう。
②一人でも持ち運べる家具を使う
一人で運べない巨大な家具は運搬が大変です。
それに加え、狭小な日本の賃貸物件では圧迫感を与えてしまうことも多々あります。
特にシングルサイズのエアーベッドがおすすめです。
エアーベッドであれば
- 空気を抜けば邪魔にならない
- シーツの色を変えるだけであらゆる物件に対応可能
という利点があります。
③小物でアクセントカラーをつける
人間の脳は情報の約9割を「視覚」で受け取って、その内の8割が「色」に関連しています。
モデルルームを見たときに最も目に飛び込んでくるのは形やデザインではなく「色」です。
そのため、より物件を魅力的に見せるには「色」=アクセントカラーを上手く使いましょう。
ホームステージング前の空室には床やクロス、建具などに初めから様々な色が使われています。
新築物件では別ですが、中古物件では内装のデザインは選べません。
真っ白な部屋もあればダークブラウンのシックな部屋、和室などもあるでしょう。
部屋の内装を自分では変えられないため、アクセントカラーの選択は慎重に行う必要があります。
大型家具をアクセントカラーにした場合、全体の色のバランスが悪ければ圧迫感を与え逆効果に。
アクセントカラーはすべての家具・部屋で使えるわけではありません。
【アクセントカラー「赤」の場合】
- 合う例:シックな部屋
- 合わない部屋:和室
最初の家具選びの時点で、
- 大型家具:どの部屋にも利用できる日本の賃貸住宅でよく見かける色
→(色合わせをしやすい)ホワイト、ブラウン、ブラックなど - 小物類(キッチンナプキンやファブリックパネルなど):一番目を引くアクセントカラー
といった使い分けをしましょう。
いかがでしたでしょうか?
コーディネートなどの専門的な話についてはとても書き足りないですが、少しでもホームステージングについてわかって頂けたなら幸いです。
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