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不動産の相続に備える

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親の持ち家は将来のリスクに?今からできる対策とは?

今回は元弁護士の経歴をお持ちのライター「福谷 陽子」氏に寄稿いただきました。

テーマは「親の持ち家を相続した場合のリスクと対策」です。

親が家を所有していた場合

  • 遺産相続トラブル
  • 不動産の管理負担
  • 各種税金の支払い

等、お子さん(相続人)にとってかなりのリスク発生の可能性があります。

そんなリスクに今から備えるためのノウハウを解説いただきました。

現在不動産を持っている方もそうでない方、不動産投資を検討されている方もぜひご一読ください。

【寄稿者プロフィール】

ふくたに ようこ
福谷 陽子
不動産ライター

弁護士時代は多くの不動産取引や賃貸トラブル、遺産相続、離婚、破産管財案件などにかかわり、不動産関係に詳しくなる。
その経験を活かし、現在は多くの不動産メディアや不動産会社サイトにて記事の執筆や監修業を行っている。

◇サイト「元弁護士 ライターぴりかの法律blog」 :https://legalharuka.com/
◇ネットに関する法律マガジン: https://note.com/puku127/m/mdf0838196a8a

Twitter: @pirica8

 

ご両親に持ち家があると、将来の相続の際トラブルになる可能性が高くなるのをご存知でしょうか?

不動産が残されると

  • 遺産分割協議で争いのもとになりやすい
  • (相続人が決まっても)活用できずに放置される
  • 管理や固定資産税が負担となる

ケースが多々あります。

今回は、親に持ち家があるときに想定されるリスクと今からできる対策方法をご紹介します。

持ち家を相続するリスク

親に持ち家がある場合、将来子どもたちが相続することになります。

その際に発生するリスクを見てみましょう。

遺産分割トラブルが発生する

相続財産の中に持ち家が含まれていると、相続人間で遺産分割方法についての意見があわずトラブル化のリスクが大きく高まります。

「不動産」は、預貯金のように細かく正確に分けることができない資産です。

そのため誰か1人が不動産を相続すると不公平になってしまいます。

不動産を引き継ぎたい相続人が、他の相続人に代償金(※)を払おうにも「お金が足りない」というケースも…。
※ある資産を相続する代わりに支払うお金の事。

また不動産の評価方法にはいろいろな手法があり、どのような評価方法を使うかで代償金の金額が変動します。

その結果、相続人が異なる評価方法を主張し、納得できずトラブルになる事例があります。

  • 不動産を売却して現金に分けたい相続人
  • 実家を残したい相続人

とで意見が割れてトラブルが発生する事案も多々あります。

親の持ち家が原因で遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に発展。

解決までに何年もかかってしまうケースも少なくないので要注意です。

管理が相続人への負担になる

親の持ち家を収益物件としてうまく活用できない場合、相続人にとって「管理」の負担がかかる可能性があります。

また不動産を放置しておくわけにはいきません。

実家が遠方にあり自分で管理できなければ、管理会社などに費用を払って管理を委託しなければなりません。

税金の負担がかかる-固定資産税・相続税

不動産を相続したら、相続人は毎年不動産の固定資産税(※)を払わねばなりません。
※場所によっては都市計画税もかかる。

また

  • 持ち家の資産価値が高い場合
  • 他にも相続財産がたくさんある場合

相続税が発生する可能性が高くなります。

相続税は基本的に「現金納付」。

不動産がたくさんあっても納税“資金”がないと支払いができない事態も想定されます。

将来の相続税納付のためには、不動産だけではなく「現金資産」「換金しやすい財産」も残しておく必要があるといえるでしょう。

以下では各トラブルやリスクへの対処方法をご紹介しますね。

遺産分割トラブルを防ぐ方法

親の持ち家で子ども達が遺産分割トラブルを起こさないために、以下のような対応をしましょう。

遺言書を作成する

遺産分割トラブルを防ぐ方法として、遺言書の作成が非常に有効です。

遺言書を作成しておけば、基本的に遺言書通りに遺産相続が進行し「遺産分割協議」をしなくて良くなります。

実家の相続人を指定しておけば子ども達が話し合って実家の相続人を決める必要がないので、トラブルになりません。

「遺留分」に注意!ただし、遺言書によって相続人の「遺留分」を侵害しないよう注意が必要です。

遺留分とは配偶者や子ども、親などの相続人に認められる最低限の遺産取得割合のこと。

遺言で遺留分を侵害した場合、侵害された相続人が侵害した相続人に「遺留分侵害額請求」をして金銭トラブルになる可能性が高まります。

家を継がせる相続人以外の相続人に、遺留分相当額の預貯金などの資産を残すようにしましょう。

生前贈与する

持ち家の相続による遺産分割トラブルを予防する2つ目の方法は「生前贈与」です。

生前贈与とは、親が生きているうちに特定の相手に財産を贈与することです。

持ち家を贈与したら家は受贈者のものになるので遺産分割の対象になりません。

将来子ども達が家の相続方法で争うリスクはなくなります。

「贈与税」と「特別受益」に注意!贈与すると「贈与税」が発生します。

親が子どもに不動産を贈与するときには「相続時精算課税制度」を利用。

2,500万円分までの贈与で贈与税を払わずに済みます。

ただし将来相続が発生したとき、贈与した不動産が相続財産に加算されてまとめて相続税がかかるので注意してください。

 

また生前贈与をすると、将来相続が起こったときに「特別受益」と評価されます。

これにより家をもらった相続人の遺産取得分が減らされる可能性が…。(=「特別受益の持ち戻し計算」)

特別受益の持ち戻し計算を防ぐには、遺言書に「特別受益の持ち戻し計算を免除する」と記載しておきましょう。

不動産の相続する負担を小さくする方法

家を相続した相続人の管理や税金支払いの負担を小さくするには、以下のような方法が有効です。

二世帯住宅にする

相続人が近くに住んでいる場合などには、二世帯住宅にして親子が一緒に暮らす方法があります。

遺言書を書いてそのまま家を同居の子どもに家を相続させれば、子どもは引き続いて家に居住が可能です。

住んでいるなら管理や税金支払いも特別な負担にはならないでしょう。

家を売却する

親が生きているうちに持ち家を売却するのも1つの対処方法です。

たとえば調子が悪くなって介護施設などに入所するのであれば持ち家は不要となるので、そのタイミングで売るなどの対応が考えられます。

特に現在の家にこだわらないなら、持ち家を売って賃貸マンションやサービスつき高齢者向け住宅へ移るのも1つです。

家を売却した場合は遺産相続の対象にもならないので、遺産分割トラブルの防止にもなります。

生前から不動産の活用方法・売却を考えておく

家を売らずに最後の時までに家で過ごしたい方の場合、「“相続後”に家をどのように活用すべきか」考えておくようお勧めします。

たとえば

  1. 持ち家の資産価値や賃貸需要を調べておく
  2. 親が亡くなったら賃貸アパートを建築して賃貸活用する

などです。

都市部であれば建物を取り壊して駐車場として活用。

田舎なら太陽光発電装置を置く活用方法などもあります。

活用が困難であれば、管理・税金の負担が無い「売却」の予定を立てておいても良いでしょう。

相続した家を売る場合、居住用不動産の売却にかかる譲渡所得税軽減(3,000万円までの譲渡所得控除)の特例を利用して税額を減らせます。
※相続開始後3年目の12月31日までに限る。

生前から対策方法を検討しておけば、いざ相続したときに「活用もできずに毎年税金や管理の費用がかさんで大変」という事態を避けられるでしょう。

納税トラブルを予防する方法

親の持ち家などの不動産を引き継いで相続税(・固定資産税)を払えないトラブルを予防するには、以下のような対処方法があります。

不動産を売却する

相続人たちがスムーズに相続税の支払いをするためには、現金資産が必要です。

居住用以外の不動産がある場合には不動産を売却して現金に変換。

相続税の支払い資金に充てましょう。

家が広大で資産価値が高くそれだけで相続税が発生するような事案では、家を売却するのも選択肢の1つとなります。

自宅を改装して一部を賃貸する

親が生前に自宅を手放したくない場合には、家の一部を賃貸物件に改築して賃貸物件として活用。

賃料収入を貯めて相続税の支払いに充てる方法もあります。

生命保険を活用すると相続税節税も可能

生命保険の活用もお勧めです。

相続人を死亡保険金の受取人に指定しておけば、受け取った死亡保険金によって相続税を支払えます。

死亡保険金には相続税の控除も認められるので相続税の節税対策にもなり、大変有効です。

親の持ち家を相続すると、子ども達に思わぬ負担やリスクが発生するケースが少なくありません。

トラブルや負担を軽減するには親の生前から遺言書作成や売却、活用などの対策が必要です。

弁護士や司法書士、税理士など専門家や不動産会社に相談しながら、今から万全の備えをしておきましょう。

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-不動産コラム・取材