不動産の直接投資と間接投資
向いている人と成功のポイントとは
今回寄稿していただいたのは、フィナンシャルプランナーとしてご活躍されて事務所・会社を経営されている伊藤亮太氏。
テーマは「不動産の直接・間接投資と不動産投資成功に必要なこと」です。
不動産投資といっても直接不動産を買う方もいれば、最近話題のJ-REITを活用している方もいて様々です。
本記事ではフィナンシャルプランナーの観点から
- 不動産投資を考えているけど、どんな投資方法がある?
- 投資する不動産をどう選んだらいいのかわからない
- 最低どれくらいの資金があれば投資できる?
- 不動産投資で成功するには何をすればいい?
など、不動産投資について分かりやすく解説していただきました。
伊藤 亮太氏
伊藤亮太FP事務所代表 (事務所HP: https://www.ryota-ito.jp/)
スキラージャパン株式会社取締役 CFP(R)
慶應大学大学院商学研究科修了後、証券会社にて営業・経営企画部門、社長秘書等を行う。
また、投資銀行業務にも携わる。
現在、資産運用と社会保障(特に年金)を主に、FP相談・執筆・講演・を行っている。
東洋大学経営学部ファイナンス学科非常勤講師。
2019年発売の監修本として『ゼロからはじめる! お金のしくみ見るだけノート』(宝島社)がある。
不動産投資と聞くと、なんだかお金持ちがやる内容と思う方もいることでしょう。
しかし、現在では多額の資金を出さなくても不動産投資ができるようになってきています。
やり方によっては数万円などでも不動産投資は可能です。
そこで様々な不動産投資の仕方について解説するとともに、どのような方がどのような不動産投資方法に向いているのか解説していきたいと思います。
所有権を明確に主張したいなら「現物投資」
「現物投資」-直接投資して不動産を所有する投資手法
まず昔からある投資方法であり、ご自身が不動産を持っていると明確に主張できる「現物投資」があります。
いわゆるマンションや一戸建てなどに投資を行い、その大家さんになる方法です。
直接ご自身で投資することから“直接投資”とも呼ばれています。
この投資では通常数百万円~数億円程度といった資金がかかりますが、全額現金で用意する必要はありません。
金融機関から融資を受けて投資するケースが一般的といえます。
現物投資のメリットとデメリット
現物投資では実際に不動産が自分のものになるため、空室であれば内装を変更することができます。
つまり不動産に投資した方の自由度がとても高いことがメリットです。
やり方次第では家賃の引き上げなどが可能となり、高利回りを実現し不動産の価値を高めることもできます。
ただし上記した通り、現物投資のデメリットはある程度まとまった資金が必要なことです。
仮に一戸のみの購入の場合には、火災や地震により大きな損傷を被るリスクが高まります。
また空室が長期間発生すれば、そもそも投資した意味がなくなってしまうことも…。
そのため、複数の地域などに分けて所有することでリスクを減らしていきます。
- 不動産を複数所有しリスク分散がはかれる方
- (土地勘のある地域で)空室リスクを判断できる方
- (土地勘のある地域で)地価上昇を予測できる方
は現物投資が向いているといえます。
地域ニーズを把握して投資不動産を決定する
現物投資にはマンションや一戸建てのほか
- アパート
- 商業施設
- ホテル
- 駐車場
など様々あります。
全国的に今後さらなる独身世帯の増加が見通されていることを踏まえると、一人暮らし向けのワンルームなどへの投資が無難です。
ただホテル一棟などまとめて投資できる方は、ホテル需要が強い地域への投資をするとリターンが大きいかもしれません。
不動産投資の物件はご自身が住むわけではないので“人に貸す”という視点から考える必要があります。
所有地の有効活用にも共通しますが、その地域にどのようなニーズがありそうか探ることができる方は直接投資に向いていることでしょう。
立地が良ければ「中古か新築か」は問題ではない
もう一点「新築と中古のどちらが良いか」は判断がわかれるところですが、不動産投資では立地から見て判断することが重要。
立地が良ければ中古か新築は問題ではなく、新築での投資も価値を保てる可能性は高いです。
リスクヘッジと手間をかけたくないなら「少額の間接投資」
数万円~100万円程度で投資が可能
“まとまった資金で不動産投資をするには勇気がいるので、まずは小口でやってみたい”という方は
- 不動産小口化投資
- J-REITによる投資
が向いています。
この二つの投資では運用会社が投資家から集めた資金をもとに不動産を購入。
投資者は想定された賃料収入を「分配金」として受け取ることができるモデルです。
直接投資家が不動産を所有するわけではないため「間接投資」と呼ばれています。
不動産小口化投資 | J-REIT | |
---|---|---|
投資口価格(目安) | 一口50~100万円程度。 | 一口数万円~。 |
特徴 | 不動産業者が運用を行う。 | 株式投資のように売買できる不動産投資手法。 (ただし時価に応じて売買されるため 日々価格が変動する。) |
いずれも少額から投資が可能なため、不動産には興味があるけど手が出せなかった層には向いているといえます。
ただしJ-REITは投資額が変動し、いつ投資するかによって分配金利回り(※)も変わるので注意して下さい。
※分配金利回り…「年間の予想分配金(=配当金)÷投資額」で算出された利回りのこと。
直接投資にはない有名物件への投資が可能
不動産小口化投資やJ-REITのメリットは、有名な商業施設など通常個人では投資ができないような物件に投資ができること。
例えばJ-REITの一つに商業施設のイオンへの投資ができるものがあります。
つまり、間接的ですがこのJ-REITを購入すれば“イオンの大家さん”になれるわけです。
このように有名な物件に投資できることが一つの楽しみ・うれしさになることでしょう。
地域分散した不動産投資でも手間がかからない
ご紹介した1口数万円~100万円ほどの不動産投資はどのように利用していくとよいでしょうか。
一つの方法として地域分散で利用していくとよいと思います。
例えば
- なかなか手が出せない地域(=三大都市)
⇒J-REITによる投資を活用する - 地方都市(=札幌、福岡等)
⇒不動産小口化投資でプロに運用を任せる
といった投資により地域を分散、リスクヘッジを行います。
また「直接投資」とは異なり、運用会社がすべて行ってくれるので自分で修繕などを考える必要がありません。
手間をかけずに投資をしたい方は「間接投資」による資産分配が向いています。
不動産投資で成功するためのポイント
投資前の調査で客観的に判断する
それでは、こうした不動産投資で成功する人と失敗する人の違いは何でしょうか。
一つのポイントとして「不動産投資する際に冷静に判断ができるか」があります。
その場の気分で購入を決めた方でたまたまタイミングが良くうまく行くケースもありますが
- 投資不動産のある地域の状況はどうか
- 人口予測はどうなっているか
- 再開発の予定があるか
など下調べは必要です。
見るべきポイントを一つ一つおさえた上で「大丈夫だ」と判断して投資ができる方は安定的な家賃収入を得ることができます。
また空室になってもすぐに次の入居者を決めることが可能となることでしょう。
下調べなしの不動産投資で借金が出来ることもある
一方でそうした下調べをせずに投資した場合、中長期的にみると投資がうまくいかないケースが多いです。
空室になり家賃が入ってこないだけでなく、買ったときよりも地価が下がり売るに売れないこともあります。
しかし一番困るのは「融資をもとに購入して売却しようと思ったときに借金が残りそうなケース」です。
これでは何のために投資したかわからなくなりますよね。
不動産は年数が経過するとどうしても価値が落ちていきます。
そのため価値が落ちることも踏まえて事前に
- 家賃でどの程度稼げるかどうか
- 空室リスク
を考えて投資に値するかどうかを検討しなければなりません。
売却のタイミングを見極めが重要
また「売却する時も経済状況等判断できるか」も重要なポイントです。
“今なら高く売れる”
“まだ今後価格が上がる可能性もあるが、利益も出るし売却しよう”
と思い立って売却できる方は利益が得やすいです。
と考えていると最終的に売るタイミングを逃し失敗することは往々にあり得ます。
そのため株式投資も同様に、ある程度利益が出たら売却して次の投資に切り替えできる方は不動産投資も向いているといえるでしょう。
不動産投資で大切なのはまず「立地」
不動産投資は結局「立地」です。
「立地が良いかどうか」「今後期待できる街かどうか」が売買のポイントになります。
人口が減少傾向あったり賃貸ニーズが減りつつある地域は、今後の不動産価格への期待は薄いです。
それよりかは
- 住み心地のよい街
- 人口増加が期待できる地域
に的を絞り、直接投資/間接投資いずれも検討されるとよいでしょう。
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