「自分の土地を貸し出したら、地代収入はどのくらいになるの?」
「もうすでに定期借地で土地を貸しているんだけど、地代が安い気がする…」
上記のように土地貸しを検討している人・すでに土地貸ししている人が絶対に気になる地代について徹底解説しています。
メインで解説しているのは以下の4つです。
- 地代についての基礎知識
- 地代の相場を知るための計算方法
- 地代を上げたいときの交渉のコツ
- 地代の増額請求の流れ
この記事を参考に"土地所有者が損しない適正な地代"を設定できるように予備知識を身に着けておきましょう。
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詳しくは後述しますが、より適正地代に近い相場を把握するには更地価格が必要です。
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Contents
地代とは「土地の賃料」のこと
地代(借地料)とは、土地の借主から地主が受け取る賃料のこと。
建物を貸している場合に受け取ることができる「家賃」と同じイメージです。
ちなみに地主は土地を貸し出すことで、地代以外にも以下の4種類の収入を受け取れます。
- 契約時に得られる収入
→手付金 - 契約期間中に得られる収入
→更新料 - 借主が建て替えを希望するときに得られる収入
・建替承諾料
・借地条件変更承諾料 - 借主が第三者に譲渡するときに得られる収入
→名義書換料(譲渡承諾料)
今回はあくまで「地代」について解説しているので、ご了承いただけますと幸いです。
余談ですが、借地契約が結ばれている土地は地主と借主で呼び方が異なります。
- 底地
→地主が貸している土地を呼ぶ時に用いられる - 借地
→借主が借りている土地を呼ぶ時に用いられる
同じ土地でも立場によって呼び方が異なるので、覚えておきましょう。
地代の受け取り方法
借地契約を結んでいる限りはずっと、借主から地代収入を得られます。
ただし地代の受け取り方はバリエーションがあり、一律ではありません。
◎地代の受け取り方法
【受領期間】
- 毎月
- 半年に1回
- 1年に1回
【受領時期】
- 前払い
- 後払い
【受領場所】
- 借主の持参
- 地主の集金
- 銀行振込
借主との合意があれば、地代の受け取り方は柔軟に組み合わせられます。
一番多いパターンはやはり、家賃と同じように「毎月前払いでの銀行振込」。
ただ銀行振込だと、借主と接する場面がほとんどなくなってしまうので注意しましょう。
借主との関係が良好でないと、たとえば値上げ交渉のときにトラブルになりやすいです。
地主としてどのパターンがベストなのかは、契約前によく検討しておいてください。
前払地代方式も選択できる
前払地代方式を利用すれば、借主は契約期間の地代全額を前払いできます(一部でもOK)。
たとえば年間地代500万円で、50年の借地契約を結んだケースを考えてみてください。
このとき契約期間の総額となる、2億5,000万円の地代を一括で支払えるんですね。
ただし税務上は地主も借主も、地代は毎年500万円として計上することが可能です。
また地主にとっては、返還不要のまとまった一時金が入るというメリットもあります。
このお金で相続税を支払ったり、新たな土地活用の資金にしたりできるでしょう。
関連記事以下の記事では相続税について詳しく解説しているので参考にしてみてください。
地代にかかる税金
地代は不動産所得であり、所得税が発生するので把握しておきましょう。
「地代収入-必要経費-所得税」が最終的に残る収入です。
必要経費には以下のようなものが含まれます。
- 固定資産税(+都市計画税)
- 管理費
- 税理士への報酬
- その他の雑費
不動産所得があれば、必ず確定申告をしなければいけません。
また不動産所得以外にも収入があるなら、合算して確定申告をしてください。
関連記事以下の記事では固定資産税についてさらに詳しく解説しています。
地代の相場・適正地代を知るための計算方法3つ
地代が適正な金額かを知るための計算方法を3つご紹介します。
- 「公租公課倍率法」を使った計算方法
- 「路線価」を使った計算方法
- 不動産鑑定士が用いる「積算法」
3つの中でもっとも正確といえるのが、③の不動産鑑定士が適正地代を算出する際に用いる方法です。
①公租公課倍率法を使った計算方法
【公租公課倍率法で地代を求める計算式】
公租公課×公租公課倍率=年間の地代
まず公租公課とは、固定資産税+都市計画税(固都税)のこと。
年間の地代は、公租公課の2倍~4倍(公租公課倍率)になるといわれています。
公租公課が年間で100万円ならば、年間の地代は200万円~400万円。
月額に換算すると、16.6万円~33.3万円ということです。
しかしこの数字は幅があるため、地代設定する際に判断に困ってしまいますよね。
設定によっては損をしたり、借主の賃料減額請求を引き起こしたりします。
なお都市計画税がかからない土地は、算出される地代が安くなるので注意が必要です。
②路線価を使った計算方法
3年間の路線価の平均額×(1-借地権割合)×6%=年間の地代
路線価とは、道路に面する土地1㎡あたりの価格のこと。
主に相続税を計算する際に使われて、毎年7月に国税庁から公表されます。
また借地権割合とは、土地の評価額のうち借地権価額の割合のこと。
土地を借りている人が受ける経済的利益の大きさを示しているともいえます。
(地価が高くなれば借地権割合も高くなるのが一般的)
路線価と借地権割合は、国税庁ホームページにある路線価図から確認可能です。
たとえば「330C」の土地であれば、路線価は1㎡あたり33万円であることを示しています。
アルファベットは借地権割合で、左上の表からわかる通り「C=70%」。
仮に330Cの150㎡の土地で、路線価が3年間変わらないケースを考えてみましょう。
「4,950万円×(1-0.7)×6%=89万1,000円」が年間の地代です。
なお以上の計算で出した地代を「通常の地代」といいます。
土地(の所有権)は借地権と底地権で構成されている。
借地権は借主に、底地権は地主の権利になる。
借主は土地を利用するために、底地権に対応する地代を支払う必要がある。
たとえば借地権割合80%ならば、残り20%は底地権割合。
借主は底地権割合20%分の地代を支払うというのが通常の地代の考え方である。
なお借地契約の際に権利金を支払わない場合は「相当の地代」を支払うことになる。
関連記事路線価についてもっと詳しく知りたい人はチェックしてみてください。
③不動産鑑定士が用いる「積算法」(更地価格・期待利回りをもとに計算)
不動産鑑定士とは、主に国や公的機関などから依頼されて不動産鑑定をする有資格者。
適正地代を査定する際は主に積算法を活用しています。
【積算法で地代を求める計算式】
更地価格×期待利回り+必要経費(公租公課など)=地代(年額の積算賃料)
更地価格や定期借地の利回りから地代を計算するのが積算法。
計算式の中の期待利回りとは、投資費用に対する1年間の収益の割合になります。
期待利回りの計算は複雑なため、2%とされることが多いです。
なお積算法で求めた地代は「積算賃料」といいます。
- 更地価格=3,000万円
- 必要経費(公租公課=固定資産税+都市計画税)=20万円/年
- 期待利回り=2%
→3,000万円×0.02+20万円=80万円(=積算賃料)
更地価格を知るには不動産一括査定が便利→「イエウール」へGO
冒頭でも紹介しましたが、積算法の計算式で利用する更地価格を知るには、不動産一括査定の利用がおすすめです。
不動産一括査定とは、複数の不動産会社にまとめて査定を申し込めるサービスのこと。
複数の査定結果をもらえば、平均価格からおおよその相場感をつかめます。
またこれまでの解説で「地主はメンドくさそう」という人が売却する際にも有効です。
トチカムがおすすめする不動産一括査定サイトは「イエウール」。
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知名度が高い大手や地方の町に根付いた業者が多数いるため、どんな不動産でも査定OK。
また査定する不動産会社は最大6社なので、高い精度の査定結果を得られるでしょう。
◎不動産一括査定のイメージ
- A社の査定結果:4,800万円
- B社の査定結果:4,300万円(最低価格)
- C社の査定結果:4,500万円
- D社の査定結果:4,900万円
- E社の査定結果:5,100万円(最高価格)
- F社の査定結果:4,600万円
→価格相場(平均価格)は4,700万円
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関連記事以下の記事では不動産一括査定サービスについて詳しく解説しています。
→不動産一括査定にデメリットはある?賢く利用するための全知識を授ける
イエウールの一括査定について詳しく知りたい人はチェックしてみましょう。
→イエウールの口コミ・評判は最悪…?不動産のプロが11つの事実を伝えます
※費用がかかってもいいなら、不動産鑑定士に地代を査定してもらうのもアリ
「地代の設定でかなり揉めていて収集がつかない…」という場合は、お金を払ってでも不動産鑑定士に鑑定評価(査定)を依頼しましょう。
最低でも30万円前後の費用がかかりますが、公的証明能力がある「不動産鑑定評価書」を発行してもらえます。
- A社:30万円~
- B社:簡易査定17万円~・一般査定24万円~
- C社:45万円~+α(借地面積の大きさにより変動あり)
- D社:調査報告書10万円・鑑定評価書20万円
- E社:35~50万円
不動産鑑定士は上述した積算法の他に「取引事例比較法」や「収益分析法」などを駆使して、多角的に地代を鑑定します。
また不動産鑑定士を選ぶ際は、以下の3つを基準に選びましょう。
- 土地の評価が得意かどうか
→土地か建物か、鑑定士によって得意分野が異なります。 - 手ごろな料金かどうか
→上述しましたが、鑑定士によって料金設定はバラバラです。 - 他業種と提携しているかどうか
→弁護士、税理士や土地家屋調査士、司法書士事務所など多岐に渡る分野と提携をしている鑑定士が心強いです。
不動産鑑定士を探すなら「不動産鑑定士ナビ」などのポータルサイトがおすすめです。
地代を値上げするための3つのコツ
「計算したら相場よりだいぶ安い地代だった…」
「できるなら地代を値上げしたい!」
地代を値上げするためには、まず交渉にて相当の理由を説明しないといけません。
値上げがどうしても必要であることを、以下のコツを活用して借主に納得させましょう。
- 「価値上昇による適正な値上げ」であることを伝える
- 「税負担が高くなって苦しい」ことを伝える
- 「他の似た土地の地代よりも安い」ことを伝える
とにかくこれまで安く借りられてラッキーだったと思わせることが重要といえます。
なお上記の地代を値上げするためのコツは、法律上の要件をわかりやすくしたものです。
詳しくは後述するが、地代増額請求は裁判に持ち込める。
しかしそもそも地代が安い場合は、訴訟費用がふくらんでしまう。
そのため増額が叶っても、トータルで見れば赤字になることもありえる。
すぐに裁判をしようと思ってなくても、内容証明を送っておくことがおすすめ。
2年に1度のペースで請求しておけば、裁判になっても数回分をまとめて請求できる。
ただし地代増額請求権は5年で時効消滅するので要注意。
参照:弁護士法人 朝日中央綜合法律事務所「不動産賃料増額マニュアル」
①「価値上昇による適正な値上げ」であることを伝える
土地そのものの価値が上がったときは、地代を見直す絶好のチャンス。
地価が著しく上昇すれば、土地から得られる利益も大きくなるとみなされるはずです。
- 近所に駅や大きな商業施設ができた
- 土地を含むエリアが再開発の対象になった
このような変化があった場合は、イエウールで土地価格をチェックし直してください。
わかりやすく値上がりしていれば、査定結果が値上げ交渉の材料になります。
ただし再開発は完成まで期間があるため、借主は再開発中は恩恵を受けないですよね。
実際に再開発が終わるまでは、値上げは待ってほしいといわれるかもしれません。
また不動産鑑定書を出してほしいといわれれば、費用がかかるので注意しましょう。
②「固定資産税や都市計画税の負担が重くなって苦しい」ことを伝える
たとえば借主が住宅を建て替えて店舗にした場合、税の軽減措置※がなくなります。
(※200㎡以下の部分の固定資産税評価額が1/6になる「住宅用地の特例」など)
軽減措置が適用されなくなればその分、固定資産税などが高くなるんですね。
◎固定資産税評価額が2,000万円のケース
【住宅用地における公租公課】
- 6,000万円×1/6(軽減措置)×1.7%(公租公課の税率※)=17万円
→固定資産税+都市計画税は17万円 - 地代を公租公課の3倍としていた場合
17万円×3=51万円
→年間でもらえる地代は51万円
※固定資産税の税率:1.4%・都市計画税の税率:0.3%
【店舗における公租公課】
- 6,000万円×1.7%=102万円
→固定資産税+都市計画税は102万円 - 地代を公租公課の3倍としていた場合
102万円×3=306万円
→年間でもらえる地代は306万円
【住宅用地→店舗になったのに地代を値上げしない場合】
- 公租公課の負担は増える
102万円-17万円=85万円
→固定資産税の負担増は85万円 - 得られるはずの地代が得られない
306万円-51万円=255万円
→機会損失※の額は255万円
※機会損失…最善の方法をとらなかったことで機会を逃して失われた利益
この場合は特に店舗に変えた借主の責任もあるので、交渉はうまくいきやすいでしょう。
③「他の似た土地の地代よりも安い」ことを伝える
周辺の類似物件より現在の地代が安いと伝われば、地代交渉はうまくいくでしょう。
不動産鑑定では検討するポイントに、周辺の賃料(+改定の程度とその推移)があります。
(1)近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における宅地の賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料、その改定の程度及びそれらの推移
(2)土地価格の推移
(3)賃料に占める純賃料の推移
(4)底地に対する利回りの推移
(5)公租公課の推移
(6)直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料の乖離の程度
(7)契約の内容及びそれに関する経緯
(8)契約上の経過期間及び直近合意時点から価格時点までの経過期間
(9)賃料改定の経緯
不動産鑑定を依頼していた場合は、不動産鑑定書が強力な武器となるはずです。
具体的には賃貸事例比較法で調査されたデータを、借主に見せることになります。
賃貸事例比較法とは?不動産鑑定評価で利用される、適正な賃料を求める方法の一つ。
事例の収集や選択は内容に留意した上で、取引事例比較法に準じる。
実証的な手法なので地代を求める際に、より説得性をもって交渉できる。
賃貸事例比較法は事例の収集が困難さから、鑑定で採用できない例も多いようです。
事前に鑑定する際は、賃貸事例比較法を得意とする不動産鑑定士に依頼してください。
増額請求で地代を上げるまでの流れ3ステップ
コツを使っても交渉がうまくいかなかった場合は、法的手段をとることになります。
地代を上げるまで(増額請求)の流れは、大きくわけて3ステップ。
- 調停の申立
- 調停期日
- 訴訟(和解 or 判決)
まだ交渉していないという人も、予習のつもりで一読してみてください。
【STEP1】調停の申立
民事調停法第24条の2では「前置調停主義」を定めています。
(地代借賃増減請求事件の調停の前置)
第二十四条の二
借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。2 前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
つまり地代増額請求訴訟を提起するためには、事前に調停の申立が必要です。
仮に調停の申立前に訴訟を提起しても裁判所は調停に回すので、把握しておきましょう。
実際に調停を申し立てるときは、裁判所にある定型の申立書を提出します。
申立についてわからなくても、受付で手続きの説明を受けられるので安心してください。
調停前置主義の例外として、調停を経ずに手続きがすすむ場合もある。
・当事者が調停当日に参加しない可能性が高い(行方不明など)
・調停の場を設けても成立の見込みがない(過去に何度も訴訟をしているなど)
【STEP2】調停期日
調停では調停委員会の仲介によって話し合いをすすめます。
調停委員会のメンバー
- 調停主任裁判官
- 書記官
- 調停委員(2人以上)
※調停委員…調停に良識を反映するため選ばれた専門家など40歳以上70歳未満の人
地代増減額請求に関する調停では、不動産鑑定士が調停委員に選出されるのが一般的。
不動産鑑定士は地主・借主の主張を聞いて、折り合いがつきそうな地代の金額を提案します。
提案された適正だと思われる地代に、地主・借主が納得すれば合意成立。
判決と同じ効力を持つ調停証書が作成されて、調停は終了するんですね。
ただし調停の結果は「不調=合意不成立」に終わることも珍しくありません。
不調でも地代増額に関する調停が終了すれば、訴訟の提起が可能になります。
なお調停が取り下げで終了すると、申立は最初からなかったことになるので要注意です。
(数回の調停で相手方が一度も出席しない場合は申立はあったとみなされる)
「調停に代わる決定」も活用されている
調停に代わる決定とは、合意成立が見込めないときに裁判所が解決のためにする決定。
決定は地主・借主の主張・事情や、決定による効果のバランスを考えてなされます。
これに対して2週間以内に異議申し立てがなければ、合意が成立して調停は終了。
実務では異議を申し立てるよりも、異議のないまま決定が確定するケースが多いようです。
ただし不適法でない異議申し立てならば決定は失効するので、把握しておきましょう。
なお調停に代わる決定に似た制度として「裁定制度」があります。
調停に代わる決定よりも拘束力が強いですが、実務ではあまり利用されていません。
【STEP3】訴訟(和解 or 判決)
調停が不調に終われば、地主は地代増額請求訴訟を提起します。
- 訴状
- 答弁書
- 準備書面
上記書類のやり取りをして、地主・借主がお互いに主張し合うんですね。
さらに双方の申し出で、不動産鑑定による適正な地代の判断が行われるのが一般的。
審理中は裁判所からの和解のすすめもあり、和解でまとまるケースも多いです。
和解に至らなければ、裁判所は鑑定評価以外のことも総合的に判断して判決を出します。
注意点としては、希望通りの判決(増額実現)になるとは限らないということ。
借主に反訴されて、逆に地代が減額するということもありえるので覚えておきましょう。
(反訴…最初に訴えられた人が最初に訴えた人を訴え返すこと)
いずれにせよ訴訟は調停とは異なり、地代の金額について何らかの結論が出るはずです。
鑑定評価は裁判所が判決で地代を決める上での証拠にはならない。
理由をカンタンにいうと「鑑定士や鑑定方法によって評価(金額)が変わる」から。
そのため鑑定評価は「本当に正確なのか」と批判的にとらえられる傾向が強い。
定期借地の地代に関する10コのQ&A
Q1. 新規賃料と継続賃料の違いって?地代と関係あるの?
新規賃料とは、新たに賃貸する際に設定される適正な賃料のこと。
継続賃料とは、すでに賃貸している物件の適正な賃料のことなんですね。
2種類の賃料はそれぞれ、不動産鑑定での鑑定方法が異なります。
「③不動産鑑定士による計算方法」で紹介したのは、新規賃料を求める鑑定方法です。
適正な継続賃料を求めるときの鑑定方法は大きくわけて4つ。
継続賃料の評価方法
- 差額配分法
→(現行賃料-新規賃料)×貸主帰属分(配分率)+現行賃料 - 利回り法
→基礎価格×継続賃料利回り+必要経費 - スライド法
→純賃料×変動率+必要経費、現行賃料×変動率 - 賃貸事例比較法
→継続の賃貸事例×事情補正×時点修正×要因比較
上記それぞれの鑑定結果をトータルで判断して継続賃料を算出します。
これから地主になる人は、継続賃料はあまり関係がないかもしれません。
しかし覚えていて損はないので、地代の予備知識として把握しておきましょう。
Q2. 訴訟中の地代の支払いってどうなるの?
地代増減額請求訴訟が終わるまで、地代を支払わなくていいということはありません。
増減額請求どちらでも、裁判が確定するまで「相当と認める額の地代」を支払います。
「相当と認める額」とは?これまでの賃料を下回らず、借主が相当と認める金額。
支払っていれば、判決により過不足が出ても債務不履行にはならない。
※借主が公租公課を下回ることを知っていたときは相当と認める額が否定される可能性アリ
判決で確定した地代に過不足が出た場合の処理は、ケースによって異なります。
- 増額が決まって支払った地代に不足が出るケース
→不足している地代に支払期後「年10%の利息」をつけて借主が支払う - 減額が決まって支払った地代に超過が出るケース
→払い過ぎた地代に支払期後「年10%の利息」をつけて地主が返還する
地主も借主も訴訟提起を考えているなら、以上の事情を把握しておいてください。
Q3. 増額の判決が確定するまで地代の受領を拒否できるの?
地主が地代を受領拒否するケースでは、債務不履行→契約解除を狙うことが多いです。
(債務不履行…この場合は借主の地代の不払いのこと)
ただし供託という制度があるため、借主が利用すれば狙い通りとはいかないので要注意。
供託とは?金銭などを国家機関である供託所を通じて権利者に取得させること。
債務の弁済など一定の目的を達成させるために設けられた制度。
供託の種類は大きくわけて5つある。
- 弁済供託…受領拒否などのケースで債務不履行を免れるための供託
- 担保供託
・営業上の保証供託
→債権者や損害を被った人の権利を担保するための供託
・裁判上の保証供託
→訴訟費用の支払いや相手方に生ずる賠償などを担保するための供託 - 執行供託…従業員の給与が差し押さえられたときなどに会社がする供託
- 没収供託…たとえば立候補の濫用防止のために立候補者がする供託
(一定の得票数に満たない場合などには供託金が没収される) - 保管供託…たとえば財産の散逸防止として経営悪化の銀行に監督官庁が命じる供託
地代の受け取り拒否に際しては借主は弁済供託をすることになる。
借主は供託の前に「弁済の提供」をしなければ、供託は無効になってしまいます。
この場合の弁済の提供とは、地代を準備したので受け取って欲しいと地主に伝えること。
(「地主が地代を受領拒否」「地代を支払いに地主の行為を要する」のいずれかに該当していることが前提条件)
弁済の提供があれば供託は有効になるので、受領拒否の目的は果たされません。
Q4. 賃料改定特約があれば地代増額は訴訟なしでできるの?
賃料改定特約とは、地代の金額を変更することについての特約のこと。
以下いずれかと連動させて、地代を増額または減額する旨を定めることが多いです。
- 土地の公租公課
- 土地の評価額
- 消費者物価指数などの経済データ
事前に合意した特約があれば、地代変更の際にトラブルが起きる可能性は低いでしょう。
ただし当たり前に適用されるわけではなく、状況により無効になることもあります。
(たとえば前例がないような公租公課の負担増や地価の暴落など)
そのため増額に関する特約が不相当でない限りは、訴訟なしで増額できるはずです。
なお不増額特約は法律に明文化されており、合意していれば一定期間は増額できません。
一方で不減額特約は合意があっても、減額請求NGにはできないので注意してください。
Q5. 相当の地代って何なの?
相当の地代とは、権利金なしで借地契約を結んだ場合に支払われる地代のこと。
(権利金…借地契約を締結するときに借主が地主に支払う更地価格の3~7割のお金)
権利金なしというのは、たとえば親族間の賃貸借契約でよく見られます。
具体的な金額の目安としては、年額の相当の地代は「更地価格の6%」です。
1 借地権(建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。以下同じ。)の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金(以下「権利金」という。)を支払う取引上の慣行のある地域において、当該権利金の支払に代え、当該土地の自用地としての価額に対しておおむね年6%程度の地代(以下「相当の地代」という。)を支払っている場合は、借地権を有する者(以下「借地権者」という。)については当該借地権の設定による利益はないものとして取り扱う。
相当の地代を支払わないと、借主は贈与されたとみなされて課税されます(認定課税)。
無償返還の届出書でも認定課税を避けられる
無償返還の届出書とは、土地返還の際に明渡料などの支払いなしを定めた書類。
権利金なしの契約を、明渡料・立退料なしにすることでバランスを取るんですね。
(明渡料や立退料は権利金と同額を支払うことが一般的)
地主と借主の連名で税務署に提出すれば、相当の地代でなくても認定課税されません。
ただしこの制度は、地主・借主いずれかが法人であることが条件になります。
また地代をタダにすると、固定資産税の軽減措置を受けられないので注意が必要です。
画像:相続相談センター 木村金藏税理士事務所
Q6. 地代増額請求ができないケースってあるの?
賃料の増減額を請求するには、要件を満たしていなければいけません。
そのため以下のようなケースだと請求自体が認められないこともあります。
◎増額請求が認められなかったケース
- 賃料が設定当初から不相当
(大判昭和17年2月27日) - 当初から賃料設定なし
(東京高裁平成15年10月29日) - 使用収益の開始前の請求だった
(最高裁平成15年10月21日)
また先述した通り、不増額特約の期間内も増額請求はできないので把握しておきましょう。
Q7. 地代に消費税ってかかるの?
土地は消費されることはないので、地代に消費税はかかりません。
土地の譲渡や貸付けは、消費税の課税の対象とならないこととされています(非課税取引)。なお、土地の貸付けのうち、貸付けに係る期間が1か月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税にはなりません。
ただし借地契約が以下に当てはまる場合は、消費税が課税されます。
- 借地契約が1ヶ月未満
- 駐車場など施設として利用される
当てはまるかどうかは、利用実態で判断されるので注意しましょう。
なお地代と同じように権利金・名義変更料・承諾料なども、消費税は非課税です。
Q8. 地代を支払う借主が変わることってあるの?
借主が持っている借地権は、第三者に売却することができます。
しかし地主が承諾しなければ、借主は勝手に売却することはできません。
ただし「借地非訟」という手続きを踏んで、裁判所の許可が出れば売却が可能です。
(借地非訟…申立・簡易手続を経て裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える手続き)
そのため借地権の売却を拒否し続けても、借主が変わるということもありえるでしょう。
なお地主が介入権を行使すれば、第三者に優先して借主から借地権を買い取れます。
先に少し触れた通り、所有権は底地権と借地権で構成される。
底地権と借地権はそれぞれ、不完全所有権と呼ばれる。
不完全所有権は利用に制約があるため、高額売却どころか買い叩かれてしまう。
ただし底地権を持つ地主が借地権を買い取れば、完全所有権を手にすることになる。
完全所有権であれば、イエウールなど比較サイトの利用で高く売れる可能性が高い。
借主と協力し合って第三者に売却するのもアリ
「いまの借地人が変わるのはイヤだ…」
「買取業者に売却されたらややこしくなる…」
「これをきっかけに売ってしまって、まとまったお金を手に入れよう」
このように考えているなら、借主と協力して完全所有権を売却するのも一手。
高額売却のチャンスがあるので、地主・借主ともに満足の結果を得られるはずです。
借主と協力して売却する際も、事前にイエウールを利用して相場を確認しておきましょう。
複数社の査定価格を比較しないと、売却価格で数百万円も損することも珍しくありません。
Q9. 地代をもらっている関係のときに底地は売却できるの?
地主は底地権を持っていますが、底地権は借主がいたまま売却できます。
ただし借地権のみと同様に、底地権単体では売れにくいです。
少なくとも個人の買い手はまず見つからないと思っておいてください。
しかし訳あり物件を扱う買取業者ならば、底地であってもすぐに買い取ってもらえます。
早ければ申し込みから1週間でのスピード現金化も夢ではありません。
「とにかく早くまとまった現金が必要!」という人にはうってつけといえるでしょう。
なお借地権の売却とは異なり、底地権の売却では借主の承諾はとらなくてもOKです。
関連記事底地の売却を検討している人は売る前に一読してみてください。
トチカムがおすすめする底地の買取業者は「訳アリ買取PRO」
訳アリ買取PROは、メリットがとにかく多い買取業者といえます。
◎訳アリ買取PROで無料査定を申し込むメリット
数ある買取業者で迷ったときは、真っ先に申し込むべきだとわかりますよね。
査定の他に細かな相談も完全無料なので、気軽に電話やメールで問い合わせてみましょう。
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営業時間:10:00~20:00(水曜定休)
Q10. これから土地を貸す予定だけど、定期借地って稼げるの?
定期借地のメリット・デメリットは以下の通り。
◎定期借地のメリット・デメリット
【メリット】
- 初期費用が低いためリスクがほとんどない
- 長期にわたって安定収入を得られる
- 管理の手間がない
- 節税を期待できる
【デメリット】
- 他の土地活用に比べて収入が低い
- 数十年は土地を自由に利用できない
まとめると定期借地は「ローリスク・ローリターン」の土地活用といえるでしょう。
コストをかけずにプラスアルファの収入を得る手段としては、うってつけの土地活用です。
解説してきたように、増額などによって相場より高い地代を得られることもあります。
しかし「土地を最大限に活用してたくさん稼ぎたい」人には、物足りないかもしれません。
まだ借地契約に至っていない人は、他の活用方法の長所・短所も確認してみてください。
関連記事
定期借地以外の土地活用について興味がある人は参考にしてみてください。
定期借地の収支例
◎土地の固定資産税評価額が3,000万円のケース
- 固定資産税:42万円
(固定資産税評価額3,000万円×税率1.4%=42万円) - 都市計画税:9万円
(固定資産税評価額3,000万円×税率0.3%=9万円)
- 年間の地代:153万円
(公租公課51万円×3=153万円)
月間の地代:12.75万円
(年間の地代153万円÷12ヶ月=12.75万円) - 手元に残る年間収入:102万円
(地代収入153万円-固定資産税42万円+都市計画税9万円=102万円)
※地代は公租公課の3倍とする・わかりやすくするため権利金などは考慮していない
関連記事定期借地・土地貸しを検討している人は以下のページもあわせてチェックしましょう。
最低限「適切な地代かどうか」を見極められるようになろう
地代の相場や値上げ交渉のコツ・流れについて解説してきました。
これから地主になるという人は、まずは適正な地代を設定しなければいけません。
地代の相場を知るための計算方法は大きくわけて3つあります。
- 公租公課倍率法を使った計算方法
→「公租公課×公租公課倍率=年間の地代」 - 路線価を使った計算方法
→「3年間の路線価の平均額×(1-借地権割合)×6%=年間の地代」 - 不動産鑑定士が用いる積算法(←1番精度が高い)
→「更地価格×2%+必要経費=地代(年額の積算賃料)
更地価格を知るには不動産一括査定が便利なので、イエウールを活用してみてください。
計算は複数社による査定結果の平均価格に2%をかけて、公租公課をプラスすればOK。
イエウールは完全無料で利用できるので、費用は一切かけずに地代の相場を算出できます。
※査定結果を出すのは最大6社の優良不動産会社!
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