不動産投資の節税対策は法人化が有効!
注意点も徹底解説(松嶋洋氏)
今回、元国税調査官で税理士の松嶋 洋氏に「不動産投資を行う場合のお得なやり方と注意点」についてご寄稿いただきました。
不動産投資を行う場合に気にかけておきたい「税金対策」。
松嶋氏によれば、最も効き目のある節税は不動産投資用の法人を作ることだそうです。
- 法人化のメリット
- 個人の法人化にオススメの方法
- 法人化する際の注意点
など、税金のスペシャリストである松嶋氏のわかりやすく解説していただいています。
お得に不動産投資するテクニックを身につけましょう!
まつしま よう
松嶋 洋氏
元国税調査官・税理士
昭和54年福岡県生まれ。平成14年東京大学卒。
国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、日本税制研究所を経て、平成23年9月に独立。現在は顧問業務の他、税務調査対策・税務訴訟等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。
とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈と、国税経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んだ、税制改正解説テキスト「超速」(http://inspireconsulting.co.jp/contents/chosoku27/)は数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得る。著書:『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』、『社長、その領収書は経費で落とせます!』『押せば意外に 税務署なんて怖くない』
先般新刊『それでも税務署が怖ければ賢い戦い方を学びなさい 調査官も知らない税務調査の急所』を発刊。
現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という350回近いコラムを連載中。
E-mail y.matsushima@totaltaxconsulting.com
〒110-0005 東京都台東区上野3‐14‐1 UENO CUBE EXECUTIVE 4階
☎ 03-3836-0363
コーポレートサイト:松嶋洋.com(http://yo-matsushima.com/)
その他:右記ページにて税務調査対策術(計118頁)を無料で公開中。(http://totaltaxconsulting.com/dl-lp/)
Facebook:https://www.facebook.com/motokokuzei
Twitter:@yo_mazs
Amazon:http://www.amazon.co.jp/-/e/B008NUV49U
税金対策で最も効果があるのは「法人化」
不動産投資と法人化-所得の分散で節税
不動産投資家の方が賢く投資を行うためには、税金対策が必要不可欠です。
この税金対策において最も効果的なものが「法人化」です。
「不動産投資を行う場合“法人で行うか個人で行うか”」、この選択について質問をよく受けます。
人によっても考え方は異なると思いますが、最初は個人で投資をスタートし年商ベースでおよそ1千万円を目途に法人化を考えるといいと解説しています。
この理由は法人を作ることのメリットが「所得の分散」にあるからです。
個人に対しては所得税が課税されますが、この税金は個人が稼いだ金額に応じて税率がアップする累進課税で課税されます。
このため個人で稼ぐ金額は小さい方が節税になる訳で、その金額を小さくする方策が法人化なのです。
分散後にある程度の所得が確保できるかで検討する
1千万円の収入がある不動産投資を行う場合で考えてみましょう。
個人でやれば1千万円が所得税の計算の基準になります。
一方で同額の不動産投資を法人でやる場合、その法人で配偶者と子供二人を役員にするなどして給与を払うとすれば4人で収入を分散。
法人であれば一人当たり250万円が所得税の計算の基準となります。
累進課税の結果、1千万円よりも250万円の方が所得税率が安いのでその分節税になる訳です。
分散を考えるのであれば相応の収入がないと効果がないため、年商1千万円くらいで法人化を考えるといいと言われます。
法人なら広範囲の経費を計上できる
その他、個人に比べて法人の方が経費の範囲が広く節税しやすいというメリットも挙げられます。
この典型例が
- 日当
- 福利厚生費
です。
物件の視察など遠隔地に出張する場合に出張者に出せる「日当」ですが、金額が適正であれば(※)所得税は非課税になります。
旅費として全額経費とすることができます。
つまり出張することでお小遣い稼ぎもできるのです。
「福利厚生費」ですが、会社の従業員の慰労を兼ねて社員旅行をしたり忘年会をしたりしても、所定の要件を満たせば経費になります。
家族で法人を作って不動産投資をする場合、家族や自分へのご褒美を福利厚生費という経費で落とせる余地があることになります。
このようなおいしい経費は個人では認められず、法人化が要件となります。
※あらかじめ旅費規程を作った上での支給である事が条件。
法人化の手法3つ
個人の法人化は「自己所有方式」がほとんど
個人で事業を行っていた不動産投資家が法人化する場合、その手法として
- 管理委託方式
- サブリース方式
- 自己所有方式
の3つがあります。
しかし、実務では上記の「③自己所有方式」を採用することがほとんどです。
これは法人に一番大きな収入を付けられることが理由として考えられます。
所有権を法人が持つ「自己所有方式」で収入額を最大にできる
- 管理委託方式…自分で管理会社を作る方法
- サブリース方式…自分の不動産を法人に一括貸しする方法
を意味しますが、上記の方法では投資した不動産の所有権は個人のままということになります。
不動産投資の収入の源泉は所有している不動産にありますから、不動産の所有者が最もお金を稼ぎます。
法人化のメリットは所得の分散にあるため、大きな収入を残す必要がある場合は法人に不動産の所有権を持たせなければなりません。
こういう訳で、法人が不動産の所有権を有する「自己所有方式」が節税では最も有利なのです。
法人化と不動産の所有権について
建物は法人、土地は個人の所有に
法人に不動産の所有権を移す自己所有方式ですが、不動産投資の対象になる土地と建物の両方を法人に移転するわけではありません。
- 建物…法人の所有
- 土地…個人が所有
- 建物を移転した法人…個人に「地代」を払う
とするのがほとんどです。
理由は土地の譲渡所得税が高いからです。
個人の不動産を法人に移転するということは、所得税においては個人が法人に不動産を時価で売却したということを意味するとされます。
このため「法人に移転した不動産の時価」と「その不動産の帳簿上の金額(帳簿価額)」の差額につき、原則20.42%の譲渡所得税が課税されます。
一方で、国税庁の内規によると“建物の時価と帳簿価額は同額で問題ない”とされています。
これは原則、建物に対しては譲渡所得税が課税されないことになります。
一方で土地についてはこのようなお得な取扱いがないため譲渡所得税が発生するケースが多くあります。
そのため土地は法人に移転せず法人が個人から借りることとします。
法人は賃料の全額から個人に支払う地代を控除した残額だけ利益を付けることができるのです。
自己所有方式の注意点3つ
この自己所有方式を進める際、以下のような注意点があります。
- 建物の購入資金
- 法人が個人に支払う地代の水準と借地権
- 登記、契約のまき直し
順にみていきましょう。
建物の購入資金を準備しなくてはいけない
法人に建物を売ったという取扱いになりますので、法人化に当たっては法人が購入代金を個人に支払う必要があります。
この購入資金ですが新設法人では銀行融資が難しいこともあり、すでに不動産投資を行っている個人がお金を貸さざるを得ないことがほとんどです。
このため個人で購入資金を用意するか、若しくは銀行に事情を説明して融資をしてもらい法人に貸し付ける必要があります。
個人が自分の法人にお金を貸してもそれだけで税務上の問題は生じませんが税務調査などで追及されてしまいます。
そのため法人との間で
- 金銭消費貸借契約書を締結
- その契約書に則って毎月法人が個人に返済する実績を作る
を行う必要があります。
なお、通常はお金を貸すときに利息を取る必要がありますが、個人が法人にお金を貸しても原則無利息で問題ないとされています。
地代と借地権の問題に要注意
法人は土地の地代を個人に支払う訳ですが、地代の金額は固定資産税の年額の2.5~3倍程度が望ましいとされています。
絶対にやってはいけないのが地代をゼロにすることです。
詳細は割愛しますが、こうすると土地の評価額が大きくなり、相続税などの問題が生じる可能性があります。
その他、土地を個人から借りる場合には、多額の譲渡所得税が課税される借地権の問題が生じる場合があります。
複雑なので詳しくは説明しませんが、この問題は「無償返還の届出」という用紙を一枚税務署に提出すればブロックできます。
失念しないよう注意してください。
登記・賃貸借契約を個人⇒法人に変更する
建物を法人に移転するため、登記はもちろん、賃借人との賃貸借契約も個人から法人に変更する必要があります。
また賃借人と契約変更するとなれば、非常に大きな手間がかかるため、契約を法人に変更せず個人のままとする方がいます。
しかし契約が個人のままであったために、税務署から自己所有方式を否認された事例があるので、確実に行う必要があります。
スポンサーリンク