中古物件の入居率が上がるDIYポイント
~設備面・内装面から解説~
今回はTwitterを中心に大家の方向けに情報発信する「ミタ大家」氏にご寄稿いただきました。
テーマは「入居率アップに直結するDIYポイント」についてです。
中古物件の入居率を上げるのに、リフォームはもはや不可欠。
そのリフォームをDIYで出来れば、コストも削減できて一石二鳥です。
ミタ大家氏によると、リフォームすべき場所は
- 設備面
- 内装面
の2つとのこと。
それぞれにおけるDIYポイントを詳細にご解説いただきました。
一人でも出来て、簡単で低コストなDIYを実現したい人はぜひお読みください。
みた おおや
ミタ大家氏
サラリーマン兼業大家
東京在住で、本業はサラリーマンの兼業大家です。
2014年末に購入した、自分の年齢と変わらないような 築年数の区分マンションが、初めての投資物件です。
現在では東京・神奈川に29室を保有し、家賃収入は年間約2000万円となりましたが、まだまだ小規模なので倍の規模を目標に物件を探しています。
賃貸事業は基本的に収入の上限が決まっているため、DIYリフォームを行うことでキャッシュアウトを抑え、手残りが増えるように努力しています。
学生時代に内装業のアルバイトを長くやっていた経験から、フロアタイルの施工が得意で、現在でも退去時の原状回復に活用しています。
趣味は主に旅行と食べ歩きですが、2年前に小型船舶免許を取得して、時々レンタルボートを借りて東京湾クルージングを楽しんでいます。
Twitter:@mita_ooya
中古物件は築数年~数十年と幅広い
古い物件はDIY以上の手間がかかる
中古物件といっても、築数年~築数十年のものまで非常に幅広く存在します。
私が所有・運営しているのは主に築20年~30年の物件です。
それ以上古い物件だと設備・内装の変更に大掛かりなリフォームが必要になり、DIYで行うハードルが高くなります。
(例)クロス(壁紙)貼り替えの場合
- 築約20年で元々石膏ボードの上に壁紙が貼ってある部屋
→準備は多少の下地調整のみ。 - 更に古い建物で寿楽壁・砂壁の和室や板張りの洋室
→下地を新たに作る、パテによる下地調整を広く行うなど多くの労力を伴う準備が必要。
また中古マンションでは、かなりの築年数が経ってもプロのリフォーム業者さんに大規模なリフォームを依頼可能です。
(古い2DKを現代風の1LDKに変更する等)
しかし、こちらもかなりの費用と時間を要します。
そこで今回お勧めするのは「一人」「DIY」で行えて、「作業が簡単」「低コスト」ながら入居率アップに直結するリフォームです。
一言でリフォームといっても、大きく分けて「設備面」と「内装面」の2種類があります。
設備面のリフォームについて
最も意識するのはポータルサイトの検索
「設備面」での入居率アップを目指すリフォームで最も意識するのはポータルサイト(※)の検索です。
※部屋を探す人が利用する賃貸物件検索サイト。
ポータルサイトでは
- 築年数
- 物件の場所
- 間取り
- 駅までの距離
- 家賃
等の基本的な条件以外に、「こだわりの条件」として様々な設備の有無を条件に追加設定して検索できます。
しかし他に良い条件があっても探す方のこだわる設備や機能がなければ、自分の物件は表示されず問い合わせも永遠に来ないのです。
【こだわり条件の検索例】
バスルームでの過ごし方にこだわりを持つ人…「追い焚き機能」「浴室内テレビ」
一人暮らしの女性…「セキュリティ」「浴室乾燥機能」
では「こだわり条件」に表示される設備は何でも取り付けるべきかというと、そうではありません。
賃貸経営という観点から、DIYで削減できるコストと入居率アップ効果のバランスを考えて導入する必要があります。
最もお勧めする設備は、洗浄機能付き便座です。
水道工事の経験がないと、洗浄機能付き便座の取り付けは難しいと思われるかもしれません。
しかし止水栓という部分に分岐金具を取り付ける方法なら、工事による水漏れの心配も少なくわずかな工具で取り付け可能です。
ネットで探せば、便座本体と金具を合わせてもプロに依頼する場合の半額以下で入手できます。
それ以外に「こだわりの条件」で選択できる設備には
- IHコンロ
- モニター付きドアホン(コンセント式)
等があり、DIYで比較的簡単に取り付け可能なのでこちらもコストを考慮しての検討をお勧めします。
こうした設備を取り付けるかどうか迷ったら
- 自分の物件が掲載されたポータルサイトで条件を変えながら検索
- その設備の付いた競合物件の数を確認しながら検討
という手順で検討すれば間違いありません。
内見を意識してドアノブを交換
次に入居希望者の内見を意識した設備について紹介します。
築20~30年の物件では回すタイプのドアノブが設置されていることが多いです。
これをレバータイプに交換するだけで、見た目の印象だけでなく使い勝手も良くなります。
特にトイレドアの場合、洗った手に水が残っていると回すタイプでは滑って開けにくいことも。
ですがレバータイプなら簡単に開閉可能です。
これまた大工工事が初めてだと、ドアノブの交換は難しそうに思われるでしょう。
ですが、作業は元々のドアノブと同じような規格で設計された新しい部品を取り付けるだけ。
場合によってはプラスドライバーだけで交換できます。
実際にDIYで行う際は規格によりバックセットという部分の長さが異なるので、物件のドアノブに合った部品を購入してください。
レバータイプのドアノブはホームセンターなどで4~5千円で入手できます。
建具を調整して内見で好感触を与える
設備面のDIYで最後に紹介するのは、少し地味ですが建具の調整です。
入居希望の方が内見に来ても、収納部分のドアが閉まりにくいと印象はあまりよくありません。
たったそれだけの理由で断られては残念です。
建具の調整は大工さんに依頼すると1日分の日当を請求される場合もあるため、DIYで解決できれば大きなコスト削減となります。
DIYによる建具調整の例■問題点
正面から見てドアが左右のどちらかに多少傾いている
→ドアの下側が木枠に当たって閉まりにくくなっている可能性
■対策
下側の蝶番を外し、紙を1㎜程度に重ねたものを挟んでから取り付け直す
→傾きが解消されてスムーズに開閉
こうした地味なDIYで直接入居率がアップするわけではありませんが、せっかく内見に来てくれた方を逃さないための効果的な対策です。
物件における「設備面」での改善をDIYで行うことで
- 自分の物件がポータルサイトの検索でヒットする
- 内見に来てくれた方と成約する
可能性を高めることができます。
内装面でのリフォームについて
ここからは、「内装面」で入居率アップが期待できるリフォームについて紹介します。
壁にアクセントクロスを貼って印象アップ
壁は内装の中でも占める面積が最も広く、また視線も高いので
- 視覚的な効果が大きく影響する
- 日々の暮らしで最も目にすることが多い
部分であると言えます。
賃貸物件の壁の内装と言えばクロス(壁紙)が最も一般的。
ですが、空室対策や入居率アップの観点から有効なものに「アクセントクロス」があります。
アクセントなので
- トイレに入ったときに正面に見える壁に貼る
- 居室の奥の1か所だけに貼る
などして周りの壁より目立たせたり、奥行きを加えるようにして使うのが効果的です。
とはいえ、アクセントクロスでカッコいい部屋にしても内見に来てくれない限りは分からないように思えるでしょう。
もしそうなら空室対策の効果が無く、入居率アップが全く期待できません。
ところが実際にはそうではなくて、以下の2つの観点からの効果が期待できます。
①広告掲載に使用する写真という観点
パソコンやスマホの普及で、現在の部屋探しはネットで行うのが主流。
仲介業者さんも店舗の訪問客向けの宣伝だけでなく、ポータルサイトでの宣伝も同時に行っています。
アクセントクロスの貼られたセンスのいい部屋の写真がネットの宣伝広告に掲載されれば
- 検索サイトを見ている入居希望者の目に止まりやすくなる
- 競合物件との差別化が行える
ので、結果的に店舗への訪問客も増えて内見で実際の部屋を見てもらえる可能性が高くなります。
②仲介業者さんに対するプロモーションという観点
立地、家賃、設備などの似た二つの物件があった場合、仲介業者さんは入居希望者にどちらの物件を紹介するでしょうか。
答えは実に簡単で「成約し易そうな物件」です。
「お中元やお歳暮を送ってくれる、優しい大家さんの物件に決まってるでしょ!」と言いたいところですが、残念ながら違います。
彼らも営利目的で活動していますから、個人の営業成績や会社の利益に直結する物件を優先して紹介しようとします。
例えば前述したように物件スペックが同等で
- 無難な白いクロスだけが貼られた部屋
- アクセントクロスが貼られた少し目立つ部屋
なら当然②の方が仲介業者さんは成約し易そうな物件と思えるので、積極的に勧めてくれることが期待できます。
(もちろん、仲介業者さんにセンスを疑われるようなド派手なアクセントクロスや内装は考えものです。)
フロアタイルで他物件と差別化
DIYにより入居率アップが期待できる内装で最後に紹介するのは、私が最も得意とするフロアタイルの施工です。
一般的に賃貸物件で主流の床材はクッションフロア(CF)。
弾力のあるビニル系のシート上に様々な天然素材のパターンを印刷したものです。
私が主宰する大家の会の中にも、コストダウン目的からご自身でCF施工される方が何人もいらっしゃいます。
他の床材としては木材を使ったフローリング。
そしてCFと同じくビニル系の素材で、CFとフローリングの中間に位置するフロアタイルです。
この3つのメリット・デメリットを比較してみました。
クッションフロア(CF) | フローリング | フロアタイル | |
メリット |
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デメリット |
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こうした点から、フロアタイルはCFとフローリングの良いとこ取りをしたような床材と言えます。
必要な工具は至ってシンプルで、単身者向けのような小さな部屋であれば大きめのカッター1本あれば十分です。
ですが、部屋の形にピッタリ合わせて施工するにはちょっとした経験や技術が必要となります。
私は学生時代にたまたま内装のアルバイト経験があり、当時親方に習ったフロアタイルやタイルカーペットなどの施工技術を数十年経った今でも覚えていたのが功を奏しました。
(もうその頃の体力はありませんが…。)
フロアタイルは物件の付加価値になる
フロアタイルを施工した部屋も、アクセントクロスと同様に入居率アップに貢献します。
写真を見るだけでは使用している床材の判別は難しいです。
しかし、ネット掲載広告に「フロアタイルを使用しています」と一言コメントを添えることで競合物件と差別化可能です。
仲介業者さんにも伝えておけば、付加価値の付いた物件として優先的に扱って貰えます。
また入居希望の方が実際に内見されれば、天然素材に近い質感や室内を歩く感触等の違いをはっきり分かってもらえます。
こうして物件における「内装面」での改善をDIYで行うことで
- ネット掲載広告における競合物件との差別化
- 内見に来てくれた入居希望の方が物件を気に入ってくれる可能性の向上
が期待できます。
DIYで低コストのリフォームを実現
入居率をアップする為の対策はリフォームだけではなく
- 仲介業者との関係強化
- 管理会社との連携強化
など、幅広く行う必要があります。
賃貸不動産においては、どの作業もプロの業者さんに委託すれば素早く効果的な対応が可能です。
しかし、同時に我々大家さんはコストとのバランスを常に気にしなければなりません。
今回の寄稿で紹介したDIYポイントはちょっとした経験や工夫も必要ですが、比較的低コスト・短期間で行えて効果の期待できるものばかり。
もし読み終わって「これなら自分でもできそう!」と感じたなら思い立ったが吉日。
是非簡単なものから試してみてください。
分からないことがあれば
- ネットで検索
- 動画を見てシミュレーション
- SNSで先輩大家さんに質問
しても良いでしょう。
私のTwitterアカウントでもそうしたDIYに関する質問にお答えしています。
それに私が主宰する「日本ツイッタラー大家の会」(参加無料)でも、会員の方同士のDIYに関する情報交換が盛んです。
最後に手前味噌で恐縮ですが、東京都内にて不定期で「DIY向けフロアタイル施工セミナー」を開いています。
興味の有る方は私のTwitterアカウントを時々覗いてみてください。
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