「駐車場経営では、どんな税金がいくらかかるの?」
「税金を少しでも安くする方法はあるの?」
このような方に向けて、当ページでは駐車場経営の税金について余すところなく解説します。
結論からいうと駐車場経営でかかる税金は以下4種類。
このうち節税できるのは所得税・事業税です。
税金 | 税率 | 節税 | |
---|---|---|---|
①「土地・建物」にかかる | 固定資産税 | 1.4% | × |
都市計画税 | 0.3% | × | |
②償却資産(土地・建物以外の資産)にかかる | 償却資産税 | 1.4% | × |
③「売上」にかかる | 消費税 | 8% | × |
④「所得」にかかる | 所得税 | 5%~45% | ○ |
個人事業税 | 5% | ○ |
以下でご紹介している各税金の詳しい計算例を参考に、ご自身の税額を弾き出してみてください。
先人の失敗例をもとに、経営を成功させるためのポイントを紐解いています。
詳しくは本記事で解説しますが、駐車場経営の税金の計算・節税対策は複雑です。
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Contents
【駐車場経営の税金①】「土地」に対してかかる=固定資産税・都市計画税
駐車場経営している土地にかかる固定資産税は更地と同じ額(税率:1.4%)。
都市部(市街化区域 ※1)では都市計画税(税率:0.3%)もプラスされます。
(※1)市区町村の「都市計画課」、または役所HPで確認できる。
【計算式】固定資産税・都市計画税固定資産税=課税標準額(※2)×税率1.4%
都市計画税=課税標準額×税率0.3%
(※2)土地・家屋の固定資産税を決めるとき、もとになる金額。市区町村(東京は都)が決める。
- 申告:不要(納付書が送付される)
- 納付タイミング:4期に分けて納付
⇒4月(東京23区:6月・23区外:5月)、7月(東京23区:9月)、12月、2月
(関連記事:固定資産税の基礎知識を確認)
<固定資産税・都市計画税の計算例>900㎡・収容台数45台=合計153万円
<前提条件>
■面積:900㎡(収容台数:45台)
■課税標準額:10万円/㎡
<課税標準額>=9,000万円
土地面積×課税標準額(/㎡)
=900㎡×10万円
=9,000万円
<固定資産税>=126万円
課税標準額×税率
=9,000万×0.14
=126万円
<都市計画税>=27万円
課税標準額×税率
=9,000万×0.03
=27万円
<合計>=153万円
固定資産税+都市計画税
126万+27万=153万円
(参考:駐車場の固定資産税はいくら?計算方法を4つのケーススタディで学ぶ)
【駐車場経営の税金②】「駐車場設備」に対してかかる=償却資産税
- 駐車機器
- 舗装
- 外灯・フェンス
など、駐車場経営で使う「土地以外の10万円以上のモノ=償却資産」には、償却資産税(税率:1.4%)がかかります。
実際に税金がかかるのは、課税標準額の合計が150万円以上のときです。
【計算式】償却資産税償却資産税=課税標準額(※3)×税率1.4%
(※3)課税標準額=年によって変わる=取得費用の7~8割(概算)
- 1年目:取得額×{1-(償却率(※1)÷2)}
- 2年目以降:前年の課税標準額×(1-償却率)
- 申告:1月31日までに、市町村都の税事務所に申告
- 納付タイミング:4期に分けて納付
⇒4月(東京23区:6月・23区外:5月)、7月(東京23区:9月)、12月、2月
<償却資産税の計算例>土地面積750㎡・収容台数37台・アスファルト舗装=37,600円
<前提条件>
■アスファルト舗装:4,000円/㎡
■土地面積:750㎡(収容台数:37台)
■償却率:0.206
<償却資産税(1年目)>=3万7,600円
■課税標準額=取得価額×{1-(償却率÷2)}
=300万円×{1-(0.206÷2)}=269万1,000
=269万1,000円
■税額
=課税標準額×0.014
=269万1,000円×1.4%
=3万7,674円⇒3万7,600円(100円未満は切り捨て)
<償却資産税(2年目)>=2万9,900円
※3年目以降も同じ方法で税額を計算します。
■課税標準額=1年目の償却資産税評価額×(1-償却率)
=269万1,000円×(1-0.206)
=213万6,654円
⇒213万6,000円(1,000円未満は切り捨て)
■税額=課税標準額×0.014
=213万6,000円×1.4%
=2万9,904円⇒2万9,900円(100円未満は切り捨て)
【駐車場経営の税金③】「売上」に対してかかる=消費税
駐車場経営から得られた「売上」に対してかかるのが消費税(税率:8%)です。
【計算式】消費税消費税=売上額×税率8%(※1)
(※1)税率=2018年4月時点。
- 申告:3月31日までに、税務署に申告
- 納付タイミング:3月31日まで
なお、次の3つの駐車場は、消費税が非課税になります。
■消費税が非課税になる駐車場3つ
①土地整備をしていない駐車場(青空駐車場)
- 舗装(アスファルト・コンクリート)されていない
- 駐車機器がない
といったような、土地だけの駐車場経営(青空駐車場)を経営する場合、消費税は非課税です。
- 砂利・駐車マス
- フェンス
がある場合は、課税されます。
②賃貸アパートに付属している駐車場
「自分で経営している賃貸住宅」に付属している駐車場を経営するときは、消費税が非課税になります。
非課税になる条件は次の2つです。
- 1部屋あたり1台分以上の駐車スペースがある
- 「駐車場料金込み」で家賃を受け取っている
③免税事業者が経営している駐車場
次の条件を満たしている事業者(免税事業者)は、消費税が非課税になります。
- 2年前の売上が「1,000万円以下」
⇒その年の消費税が非課税になる - 資本金「1,000万円未満」の会社を設立
⇒設立から2年間が非課税になる
免税事業者とみなされたとしても、利用料金を「税別表記」するのはOKです。
<消費税の計算例>コインパーキング・10台・400円/h・稼働率30%=83万2,000円
<前提条件>
■駐車場の種類:コインパーキング
■料金:400円/h
■収容台数:10台
■営業時間:24時間
■休み:なし(30日×12か月営業)
■稼働率:30%
<売上>=1,040万円
■売上=料金×経営時間×収容台数×稼働日数×稼働率
=400円/h×24時間×10台×30日×12か月×0.3≒1,040万円
<消費税>=83万2,000円
■税額=売り上げ×税率
=1,040万円×0.08
=83万2,000円
【駐車場経営の税金④】「所得」に対してかかる=所得税・個人事業税
駐車場経営の「売上-経費-各種控除=所得」に対してかかるのが所得税・個人事業税。
個人事業税がかかるのは収容台数10台以上の駐車場で、規模が小さい場合は所得税がかかることになります。
【計算式】所得税・個人事業税■所得税=所得額×税率5~45%-所得控除
- 申告:3月15日までに、税務署に申告
- 納付タイミング:3月15日まで
■個人事業税=(所得額-事業主控除290万円)×税率5%
- 申告:3月15日までに、税務署に申告
- 納付タイミング:2期(8月・11月)にわけて納付
<所得税の計算例>月極駐車場・20台・稼働率100%=66万500円
<前提条件>
■土地面積:750㎡
■駐車場の種類:月極駐車場
<所得>=544万円
■売上
=収容台数×賃料×稼働率×12か月
=29,000×20台×1.0×12か月
=700万円
■経費
=固定資産税+償却資産税+管理費+修繕費+電気代
=112万+40,000+20万+10万+10万
=156万円
■所得
=売上-経費
=700万円-156万円
=544万円
<所得税>=66万500円
所得×税率-所得控除
=544万×0.2-42万7,500
=66万500円
<所得税>で活用できる控除4つ
所得税は「課税対象額(収入-経費-各種控除)×税率」で算出しますが、以下4つの控除を活用できます。
(上述した計算例には、算入していません。)
- 基礎控除
⇒所得から38万円を差し引ける - 社会保険控除
⇒所得から1年間で支払った社会保険料全額を差し引ける - 配偶者控除
⇒所得から13万~48万円を差し引ける - 扶養控除
⇒所得から家族1人あたり最高68万円を差し引ける
控除の額が大きくなるほど課税対象額が圧縮され、税額を少なくできます。
確定申告するときは、控除額を忘れずに書類を作成するようにしましょう。
(参考:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」)
①基礎控除=所得から「38万円」を差し引ける
所得税・個人事業税の納税者なら誰でも、所得から38万円を差し引くことができます(=基礎控除)。
②社会保険控除=所得から「1年間で支払った社会保険料全額」を差し引ける
1年間(1月~12月)で支払った社会保険料の全額を所得から差し引けるのが、社会保険控除です。
対象となるのは、次のようなもの。
- 国民年金、国民年金基金、厚生年金基金の掛金
- 健康保険、国民健康保険の保険料、国民健康保険税
- 労働保険料、厚生年金保険
- 後期高齢者医療保険、介護保険料
社会保険料を支払ったことを証明する書類(控除証明書 or 領収書)を確定申告書に添付すれば、控除を受けられます。
③配偶者控除=所得から「13万~48万円」を差し引ける
給与収入103万円以下(パートタイム・アルバイトなど)の配偶者がいる場合、所得から13万~48万円を差し引けるのが配偶者控除。
- 納税者(オーナー)の所得
=所得の合計(給与所得・不動産所得などを合算)-各種控除 - 配偶者の年齢
によって、以下のように控除額が変わってきます。
■配偶者控除の控除額
納税者(オーナー)の所得 | 控除額 | |
---|---|---|
配偶者の年齢 =70歳未満 | 配偶者の年齢 =70歳以上 |
|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超え~950万円以下 | 26万円 | 26万円 |
950万円超え~1,000万円以下 | 13万円 | 13万円 |
1,000万円超え | 控除なし |
たとえば、以下の条件の場合、
- 納税者(オーナー)の所得:800万円
- 配偶者の年齢:30歳
38万円が控除されるので、所得額は762万(800万-38万)となります。
控除を受けるための条件は次のとおり。
- 配偶者の1年間(1/1〜12/31)の給与収入が103万円以下であること
- 民法で規定された配偶者であること(内縁関係の人はNG)
- 納税者・配偶者が生計を一にしていること
- 配偶者が青色事業専従者として給与の支払を受けていないこと
- 配偶者が白色事業事業専従者でないこと
なお、後述する扶養控除との併用はできません。
④扶養控除=所得から「家族1人あたり最高68万円」を差し引ける
扶養家族(給与収入が103万円以下の家族の者)がいる場合、所得から家族1人あたり最大68万円を差し引くことができます。
控除額は扶養家族の年齢によって変わります。
■扶養控除の控除額
年齢 | 控除額 |
---|---|
16歳未満 | なし |
16歳以上19歳未満 | 38万円 |
19歳以上23歳未満 | 68万円 |
23歳以上70歳未満 | なし |
70歳以上(同居していない) | 48万円 |
70歳以上(同居している) | 58万円 |
たとえば、以下の家族を扶養している場合、
- 20歳の子供×2人
- 同居している75歳の親×1人
(68万×2人)+58万=194万円が控除される計算です。
なお、配偶者控除・配偶者特別控除との併用はできません。
<個人事業税の計算例>月極駐車場・50台・稼働率100%=27万2,000円
<前提条件>
■土地面積:1,000㎡
■駐車場の種類:月極駐車場
<所得>=834万円
■売上
=賃料×収容台数×稼働率×12か月
=16,400×50台×1.0×12か月
=990万円
■経費
=固定資産税+償却資産税+管理費+修繕費+電気代
=112万円+4万円+40万円
=156万円
■所得
売上-経費
990万-156万
=834万円
<個人事業税>=27万2,000円
(所得-事業主控除)×税率
=(834万-290万)×0.05
=27万2,000円
駐車場経営にかかる所得税・個人事業税を【節税】する方法
青色申告を活用すれば、駐車場経営の所得税・個人事業税を節税できます。
青色申告とは?確定申告の方法の1つ。所得税・個人事業税の優遇が受けられる。
青色申告をするためには、青色申告承認申請書を次の期限までに提出しなくてはいけない。
- 1/1~1/15に開業した人
⇒その年の3月15日 - 1/16以降に開業した人
⇒開業日から2か月以内
節税方法は次の2種類。
個人事業税には、「青色事業専従者給与」を適用できません。
節税方法 | 所得税 | 個人事業税 |
---|---|---|
①青色申告特別控除 =所得から65万円 or 10万円を差し引ける | ○ | × |
②青色事業専従者給与 =駐車場経営を手伝う家族の給与を経費として計上できる | ○ | ○ |
節税方法①:青色申告特別控除=65万円 or 10万円を所得から控除できる
青色申告によって確定申告をした場合、所得から65万円 or 10万円を差し引けるので(青色申告特別控除)、所得税を圧縮できます。(個人事業税には適用できません)
「所得税額=所得×税率」なので、所得を圧縮することで税額を減らせるというわけです。
収容台数によって、控除される額が違ってきます。
- 収容台数50台以下
⇒10万円が控除される - 収容台数50台以上=事業的規模
⇒65万円が控除される
<青色申告特別控除の計算例>所得734万円のときの節税効果=14万1,700円
<青色申告特別控除>を適用する=91万500円
所得税=(所得-青色申告特別控除額)×税率-所得控除
=(734万-65万)×0.2-42万7,500
=91万500円
<青色申告特別控除>を適用しない=105万2,200円
所得税=所得×税率-控除額
=734万×0.23-63万6,000
=105万2,200円
<節税効果>=14万1,700円
105万2,200円-91万500円
=14万1,700円
<前提条件>
■土地面積:1,000㎡
■駐車場の種類:月極駐車場
<所得>=734万円
■売上
=賃料×月数×収容台数
=16,400円×50台×12か月
=990万円
■経費
固定資産税+償却資産税+管理費+修繕費+電気代
112万円+4万円+140万円
=256万円
■所得
=売上-経費
=990万-256万
=734万円
節税方法②:青色事業専従者給与=経営を手伝う家族の給与を経費として計上できる
青色申告をした場合、駐車場経営を手伝う家族(青色事業専業者)の給与を経費として計上できるので、所得税・個人事業税を圧縮できます。
「収入-経費=所得」なので、経費が増えることで所得が圧縮され税額が減少するわけです。
なお、駐車台数50台以下のコインパーキングは適用できません。
駐車台数50台以下 | 駐車台数50台以上 | |
---|---|---|
月極駐車場 | ○ | ○ |
コインパーキング | × | ○ |
<青色事業専従者給与の計算例>売上890万円のときの節税効果=29万6,000円
<前提条件>
■土地面積:1,000㎡
■駐車場の種類:月極駐車場
<青色事業専従者給与>を費用計上した場合=24万500円
■売上
賃料×収容台数×12か月
=14,800円×50台×12か月
=890万円
■経費
固定資産税+償却資産税+駐車機器費用+管理費+修繕費+電気代+青色事業専従者給与
=112万+40,000+100万+20万+10万+10万+320万
=556万円
■所得税
所得(売上-経費)×税率-控除額
=(890万-556万)×0.2-42万7,500
=24万500円
<青色事業専従者給与>を費用計上しない場合=53万6,500円
■売上
賃料×収容台数×12か月
=14,800円×50台×12か月
=890万円
■経費
固定資産税+償却資産税+駐車機器費用+管理費+修繕費+電気代
=112万+40,000+100万+20万+10万+10万
=256万円
■所得税
所得(売上-経費)×税率-控除額
=(890万-256万)×0.1-97,500
=53万6,500円
<節税効果>=29万6,000円
53万6,500-24万500
=29万6,000円
他の事業で赤字が出てしまった場合、その赤字分を駐車場経営で得た所得(給与所得など)から差し引くことができます(=損益通算)。
結果として、オーナーが支払う所得税額が全体として少なくなります。
たとえば次の2つの所得を損益通算した場合、
- 駐車場経営の所得:-200万円
- 給与所得:+500万円
その年の所得は300万円(500万-200万)となります。
結果として税額は、
- 損益通算したとき
⇒300万×0.1-97,500=20万2,500円 - 損益通算しないとき(赤字の駐車場経営は非課税)
⇒500万×0.2-42万7,500=57万2,500円
となり37万円の節税効果が生まれます。
駐車場経営における節税のポイント=「自分の駐車場」「税制」を正確に把握すること
このページでは駐車場経営にかかる税金について、概要・計算方法・節税方法を解説しました。
大きな節税効果が見込めない駐車場経営ですが、所得税・個人事業税については確実に税額を抑えるべきです。
- 自分の駐車場は、どういった控除を受けられるのか?
- 青色申告の事業的規模に該当するのか?
といった点を正確に理解しましょう。
そのためには、次の2点を正確に把握する必要があります。
- 自分の駐車場
- 税制
特に所得税の仕組みは複雑なので、初心者オーナーさんは土地活用のプロ(土地活用プランナー・コンサルタント)に相談することをオススメします。
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しかも税金の仕組みは複雑。初心者オーナーさんが全てを把握するのは困難です。
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