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中古物件の投資で失敗しないために!
~リフォーム・リノベーションの方法と考え方~

今回は不動産投資家として賃貸経営をされている「らい」氏に寄稿いただきました。

テーマは「中古物件のリフォーム・リノベーション」についてです。

利回りの点でメリットの多い中古物件は、リフォームやリノベーションで住宅の価値を維持・創造することが重要になってきます。

そこで本記事では

  • リフォーム・リノベーションの違い
  • 方法と検討する際のポイント
  • (工務店への)依頼方法
  • 賃貸経営で重要なこと

などを解説いただきました。

これから不動産投資を始める方や既に物件を保有・経営されている方もぜひ参考にしてみてください。

 【寄稿者プロフィール】

らい
不動産投資家・大家

23歳貯金0の時にできちゃった結婚。
毎日納豆食べて過ごしていました。
ある日家に帰ると家族はおらず、割れた食器が散乱していました。
現在は自社で改装・賃貸経営をする会社に勤めている現場監督&空き家再生人。

不動産賃貸経営者としてはまだ1年の新人。

Twitter:@RAI73surfer

 リフォームとリノベーションの違いとは

線引きがあいまいな部分が多々あるのですが簡単に説明すると以下の通りです。

  1. 「リフォーム」(修繕)
    …古くなったものを直す工事
  2. 「リノベーション」(資本的支出)
    …建物の価値を高める工事

一括償却(※)ができるか否かは長く賃貸経営をする上で大事なポイントとなるので理解しておいて損は無いでしょう。

リフォーム -設備や老朽した建物を修繕

「リフォーム」とは、今ある設備や老朽化した建物を“修繕”する工事のことです。

例えば、外壁塗装が剥げてボロボロになってきたので外壁を塗装。

クッションフロアが汚れてきたときに新しいクッションフロアを貼り直したりします。

リノベーション -建物の質を向上させる工事

「リノベーション」とは、今の建物よりも“クオリティを上げて”より住みやすくする工事のことです。

LDKが狭ければ壁や柱を抜いて広いLDKを造成。

他にも外壁の見た目が古いときには金属サイディングを張るなどがあります。

 

※一括償却とは…
通常の減価償却ではなく、取得額が20万円未満の固定資産税なら種類を問わず3年間で均等に償却すること。

リフォーム・リノベーションの方法2つ

物件の工事方法として大きく分けて2つの方法があります。 

  1. 工務店へ依頼する
  2. DIYをする

それぞれのメリット・デメリットを説明します。

工務店へ依頼

リフォーム・リノベーションのやり方として一般的なのは、プロの工務店へ工事の依頼をすることです。

 工務店への依頼のメリットとデメリットは以下のように整理できます。

メリット 

  • 仕上がりが綺麗 
  • (各職種の職人をきちんと段取りするので)工期が早い 
  • 失敗が少ない 

デメリット 

  • ある程度の価格になる
  • 自分のイメージが100%伝わりきらない 

DIYDo It Yourself)をする 

DIYとは、昨今流行っている自分で材料の調達・作業をする方法のことを言います。
※DIY…Do It Yourselfの略。

DIYのメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

  • 価格を抑えられる
    ※例外あり(デメリットを参照。)
  • 趣味として楽しめる 
  • 工事の知識が付く 

デメリット 

  • 工期がかかる 
  • 仕上がりがプロに及ばない事が多い 
  • 浅い知識で作業すれば建物の寿命を縮めることがある 
  • 失敗すると通常の倍以上費用がかかることがある
    ※プロに直しを依頼する場合。

知識があっても工事がうまくできるとは限らない

ネットでDIYに関しての動画や記事がたくさんあるので少し勉強をすればそれなりに工事ができます。 

ですが「知識がある=工事がうまく進む」事では無いことは肝に銘じてください。

リフォーム・リノベーション方法の決め方

全体にかかる「コスト」で比較検討する

クロス/フローリング/塗装など作業内容に応じて、材料にも適材適所があります。 

そのため、コストの削減を目的としてリフォーム・リノベーションを選ぶ際には注意が必要です。

特にDIYをする場合、逆にコストが余分にかかるパターンが多々あります。 

予備知識をつけたとしても現場は教科書通りにいかない事が多く、その時々により

  • 塗膜が剥がれる
  • クロスが浮いてくる
  • フローリングが軋む 

などの不具合が起きてしまい、自身ではどうする事もできず工務店へ依頼する事に…。 

その結果「DIY分+工務店」の作業代がかかり、予定よりも高くついてしまう事もあります。

 「機会損失」で手法を選ぶ

多くの方が見落としがちなのが「機会損失」です。 

DIYは想像以上に時間がかかるもの…。

サラリーマンの方は本業が終わった後や休日など利用して作業をする事になるので、当然スピードが遅くなります。

毎日作業をして手慣れているプロと素人が同じ時間で終わらせる事はできません。 

工務店が通常2週間で終わらせる工事DIYだと数ヶ月かかってしまいます 

(僕の知り合いでは戸建の外壁塗装を1年かけてDIYされた方がいました。 (※工務店に依頼すれば3週間)

1日でも早く終わらせて入居付けをすれば、家賃数万円が収入として入ってきます。

副収入を得られる機会をみすみす逃している事に気づいていない方が結構いますので要注意です。 

 時間の余裕・今後の計画で検討する

ここまで書くとDIYを否定しているように見えますが、以下の条件が当てはまるのであれば僕は断然DIY肯定派です。 

  1. 日曜大工が好きで時間がある 
  2. SNSなどでそれを発信する力がある方

コスト削減を目的せず上記の条件をどちらか満たしているのであればDIYは大きな武器ります 

今後物件をガンガン買い進めていくのであれば工務店へ依頼してみましょう。 

ゆっくり進めていく方でどうしてもDIYをやりたい方メインの空間LDKや玄関など)は工務店に依頼。

小さい空間(トイレや2階の居室など)DIYするという方法あれば、うまくバランスが取れた工事ができるかと思います。 

 ~賃貸経営者の視点で計画・工事を行うことが重要~

リフォーム・リノベーションで高級な設備や付加価値を上げる工事をすれば、入居はつきやすいかもしれません。

しかし

  • 費用対効果が薄い
  • 償却しきる事ができず資金計画が狂う

こともあるので、あくまでも不動産賃貸経営の“経営者”という立場できちんと計画をして工事を考えていきましょう。 

工務店へ依頼するまでのポイント

上述したとおり、リフォーム・リノベーションは一般的に工務店へ依頼することが多いです。

そのため、今回は工務店へ依頼するまでのポイントをお伝えします。 

以下のポイントは必ず物件を購入する前に検討・実施するようにしてください。

①収支計画に合う物件を購入する

中古物件を買った後に「“この物件はいくらかかりますか?”」と聞いてくる大家さんが多くいらっしゃいます。

しかし、賃貸経営は購入前に9割が決まるといっても過言ではありません。

逆を言えば、買ってはいけない物件も購入前に9割は見極められます。

必ず購入前の下見段階でエリアマーケティングを行い

  • 周辺の家賃相場
  • 競合物件の偵察
  • 周辺施設からのターゲット層の選定

をして収支計画に合う物件を購入してください。 

工事費を踏まえて利回り計算をする

よく“表面利回り○%”という活字を目にしますが、どこまでを含めての“表面”なのかを理解していないと痛い目にあいます。 

一切修繕がいらない物件の場合、一般的な利回り計算で問題ありません。

《一般的な表面利回りを求める計算式》

「表面利回り」=年間家賃収入÷物件購入価格

しかし、大半の中古物件は何かしら修繕が必要に…。

その際の「工事費」は上記に一切含まれていないので注意が必要です。

工事費を事前に把握しておくことは賃貸経営にとって非常に重要なので、以下の利回りを無意識で計算するようにしてください。

《工事費を含めた表面利回りを求める計算式》

「表面利回り」=年間家賃収入÷(物件購入価格+工事費)

予め計算しておけば購入後に相談するケースも無くなります。

ちなみに、「工事予算」を算出してくれるの工務店です。 

②賃貸経営を理解している工務店を選ぶ

必ず重要視して頂きたいのは、選ぶ工務店が“収益物件の工事を専門としているか否か”です。 

工務店といっても、以下のとおりジャンルがいくつかあります。

【工務店のジャンル】

  • 店舗などを得意としている工務店
  • マイホームリノベを得意としている工務店
  • ビルなどの大規模修繕を得意としている工務店    など。

私は以前「マイホームリノベ専門の某大手工務店」に勤務していましたが 、現在は「収益物件専門の工務店」で現場管理・監督をしています。

そこで気づいたのは各ジャンルで工事の考え方が全く違うという事です。 

マイホームリノベの場合、依頼主の方がリノベをする家に住むことが大前提。

しかし収益物件の場合は依頼主が住むわけではないので、“収支計画に沿った数字”が全ての軸になります。

これを理解していない工務店の場合、勧めてくるのは「住みやすさ」を重視した提案や費用対効果の薄い商品。

無駄なタイムロスが生じます。 

工務店の選定する2つの方法

上記を踏まえて最初の工務店選びはとても難しいのですが、おすすめの選定方法は以下のとおりです。

  1. 知り合いの大家がお願いしている工務店を選ぶ 
  2. SNSやHPで収益物件を工事した様子を綴っている工務店を探す 

一番手っ取り早いのは上記①ですが、大家は孤独になりがち。

各町の「大家会」(大家が集まって情報交換をする会合のこと。)に入って色々な業種を紹介してもらう事が賢明です。 

足を使って各工務店に手当たり次第話をするのもいいでしょう。

しかし非効率的で大抵の大手工務店は“できない”とは言わないので、選ぶのは困難。

そのため、上記②収益物件を工事した様子をあげているHPの工務店を探す事が大事です。

 

工務店とは下請けでは無く賃貸経営をしていくための自身のパートナーです。 

利回り、減価償却など経営目線できちんと理解している工務店を探す事が今後の運営を円滑に進めるために重要となってきます。 

経営ビジョンに合った工事をする

信頼できそうな工務店を見つける事ができたら、気になる物件の下見に同行してもらいましょう。 

そこでのポイントは自身の賃貸経営のビジョンをしっかりと計画しておく事です。 

工事には大きく分けて 

  1. 寿命を維持するための工事
    例)屋根の葺き替え、外壁塗装、耐震補強など躯体を補強
  2. 内装を良くするための工事
    例)クロスの貼り替え、キッチンの取り替え、トイレの交換

の2種類があります。 

入居付けを最優先に見た目にだけこだわった工事をすれば、数年後には雨漏り・傾き・白蟻など建物自体が使い物にならなくなります。 

逆に、内装ボロボロのままであれば入居が付きにくく家賃収入が入ってきません。 

「建物の寿命をそこそこ維持しつつ、内装・見た目もそこそこ綺麗に」というのが基本的な中古物件の工事の考え方です。
(※曖昧ですが線引きが難しいのです…。) 

上記をふまえて、経営計画の中で

  • 「何年後に売却するのか」
  • 「何年間保有するのか」

に応じて工事内容をアレンジすることが大切です。

例えば5年後に売却を考えている場合、建物が20年持つようにフル改装をしても15年分が無駄になってしまいます。

15年分の付加価値を見出した金額で購入をしてくれる方がいれば別ですが、都合の良いようには考えないようにしましょう。

〜で売れたら、〜で買えれば、という“たられば”は賃貸経営ではご法度です。 

賃貸経営・物件づくりに大切なこと

「リスク」で考える賃貸経営

個人的に、売却目的で賃貸経営をするのは少しリスクがある思います。 

キャピタルゲインで一番利益が出る方法は「工事費を抑えて高い家賃で入居付けする事」です。 

そのためには

  • 「寿命を維持するための工事」を省く
  • 「内装を良くするための工事」に多く費やす

というシンプルな方法で実現します。

しかし、売れない期間中に建物に不具合(雨漏り、配管の水漏れ等)が起きた場合はどうでしょう。

入り口からキャピタルありきで考えていたときには収支計画は乱れてしまいます。

不具合を大前提として建物の寿命維持に重きを置いて工事をしたインカムベースの物件の方が、利益は低くなりますがリスクは少なくなります。

長く賃貸経営をする上で大切なのは、「大儲けする」することではなく「退場しない・負けない」こと。

「誰かが大儲けする=誰かが損をする」という構図を少しでもご理解して頂ければ、不動産業界の怪しさも軽減されるかもしれません。(笑)

「オンリーワン物件」を目指す

ここまで説明してきましたが、工事内容に明確な正解は無く

  • 個々の状況
  • 経営ビジョン

によって選択は変わってくるものです。

今後人口減少が進み、これまで以上に賃貸業界は飽和状態に向かいます。

これからは“綺麗な物件”というだけでなく、“オンリーワン物件”が差別化のポイントです。

周りが綺麗な物件というだけで同じようにすれば幾多の物件に埋れていってしまいます。

大事なのは「誰に住んでもらいたいか」を明確にイメージして物件を仕上げる事。

子供、妻、夫、釣り好きな人、読書が好きな人、足が悪い人、猫が好きな人…

誰か一人をイメージして仕上げた物件は間違いなく“オンリーワン物件”となります。 

簡単なようで難しいですが、このマインドがあるか無いかで工事の考え方・進め方は楽しく、芯の通ったものになるはずです。

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-不動産コラム・取材