本記事では数ある土地価格(土地評価額)の中でも、路線価(相続税路線価)に焦点をあてて特集しました。
- そもそも路線価って何?
- 路線価と他の土地価格との違いは?
- 路線価図の調べ方や見方は?
このようなギモンはすべてこのページで解決します。
読み進めていく中で「自分が知りたい土地価格を調べるには路線価が適している」と感じた方は、画像付きの解説を参照しながら実際に調べてみてください。
※厳密にいうと路線価には2種類ある
- 相続税路線価・・・相続税や贈与税の算出に用いる
- 固定資産税路線価・・・固都税や不動産取得税、登録免許税の算出用
本記事では相続税路線価に焦点を当てて、見方や土地評価額の算出方法を解説しています。
Contents
路線価とは?公示地価(基準地価)や実勢価格とどう違う?
路線価とは5種類ある土地価格の一種で、主要な道路に面する土地1㎡あたりの評価額のこと。
国税庁が1月1日時点の土地評価をもとにして毎年7月ごろに公表しています。
路線価を使って土地の評価額を計算することで、該当地にかかる相続税や贈与税を調べることができます。
一方で公示地価(基準地価)や実勢価格の特徴や用途は以下の通り。
- 公示地価
→土地の資産価値を表し、私的公的の土地取引や路線価の基準となる土地価格 - 基準地価
→公示価格の下半期バージョン - 実勢価格
→過去の取引例や動向から推し量る土地価格で、土地の市場価格を示すもの
それぞれ公表時期や価格の基準値が異なるので、同じ土地でも違った価額になります。
【土地価格の違いまとめ】
種類 | 路線価 | 公示地価 | 基準地価 | 実勢価格 |
---|---|---|---|---|
主務官庁 | 国税庁 | 国土交通省 | 都道府県 | 不動産会社 シンクタンク |
価格時点 | 毎年1月1日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 | 過去の取引 による |
公表時期 | 毎年7月 | 毎年3月 | 毎年9月 | 常に |
価格 | 正常価格を 基にした価格 (更地の価格) | 正常価格 (更地の価格) | 正常価格 (更地の価格) | 交渉による |
価格基準 | 公示地価の80% | 適正な時価 (都市計画区域内) | 適正な時価 (都市計画区域外も含む) ※基準地価は一般的に実勢価格の7割から8割といわれています。 | 当事者同士 の交渉額 |
【路線価と公示地価・基準地価の違い】土地の"資産価値"を調べるなら公示地価(基準地価)
路線価と公示地価(基準地価)とで異なるのは、土地の資産価値の正確性が異なります。
「金融機関で土地を担保として使う予定がある…」というような場合は、公示地価(基準地価)の方が向いているんですね。
【補足】
おおまかな価格でOKなら「路線価×1.25倍」で、土地の資産価値を概算できます。
公示地価×0.8=相続税路線価
→相続税路線価×1.25=実勢価格
「路線価は実勢価格の80%程度」から逆算すれば、路線価からおおまかな実勢価格がわかります。
路線価と公示地価(基準地価)は評価時期や調査主体が異なる
路線価と公示地価(基準地価)の評価時期や調査主体は以下のように異なります。
◆路線価◆
公表時期:毎年7月ごろ(評価時点は1月1日)
調査主体:国税庁
◆公示地価◆
公表時期:毎年3月ごろ(評価時点は1月1日)
調査主体:国土交通省
◆基準地価◆
公表時期:毎年9月ごろ(評価時点は7月1日)
調査主体:各都道府県
上記を見ると分かりますが、路線価と公示地価の評価時点は1月1日で同じです。
しかし発表時期は公示地価が春先に対し、路線価は夏頃の公表でその差は顕著。
夏の時点で地価が変動し、1月1日時点の地価とは異なっていることも考えらます。
一方で公示地価の代わりとなる基準地価は、評価時点が毎年7月1日。
下半期の土地価格を確認することができます。
例えば以下の公示地価と基準地価の例を見てみると、一年の前後半で地価が変化していることがわかります。
◆H30.東京都江東区南砂の公示地価(上半期)
◆H30.東京都江東区南砂の基準地価(下半期)
→1㎡あたりの価格が13,000円変化している
路線価と公示地価や基準地価の価格差はどのくらい?
以下は先ほど紹介した東京都江東区南砂周辺の路線価です。
赤くマークした路線価と先ほどの公示地価、基準地価の評価額をカンタンに比べてみると以下の通り。
- 路線価…1,729万円
- 公示地価…1,762万円
- 基準地価…1,823万円
路線価で求めた価額と基準地価は100万円近くズレていることがわかります。
路線価を単純に1.25倍した額は公示地価の値に近いですが、年の後半では地価の変動による価格差は避けられません。
【路線価と実勢価格の違い】地価の"変動"や"動向"を調べるなら実勢価格
路線価には評価時点や公表時期があることをお伝えしましたが、実勢価格には評価する時期はナシ。
路線価は1月1日時点の評価で1年を通して地価の変動は考慮していません。
一方で地価の変動や動向に左右されて、日々移り変わっているのが実勢価格。
そもそも用途が異なりますが、実勢価格は路線価よりも常に新しく更新された情報になります。
公的な指標ではないものの、より多くの取引事例を集めたり、査定に出すことで土地の市場におけるトレンドがまるわかりできます。
実勢価格は不動産の取引を行う投資家の方々にとって実勢価格は欠かせない存在です。
路線価の調べ方・見方を画像付き&具体例を交えて解説
国税庁のHPを利用して路線価を調べる
路線価図はインターネットで「国税庁 路線価図」と検索するとかんたんに確認できます。
(参考: 国税庁 路線価図・評価倍率表)
国税庁の路線価図にアクセスすると以下の日本地図が出てきます。
調べたい都道府県を選択し、以下の画面の赤枠で囲まれた「路線価図」をクリック。
市区町村を一覧できる画面で、該当地の詳細を選択。
ここでは東京都中央区佃2丁目付近の路線価図を紹介します。
また路線価図で調べたい地点を見つけにくい場合はGoogleなどの地図アプリと比較して、地形をヒントに該当箇所を探すのがオススメです。
◆例 東京都中央区佃付近の路線価図
路線価図を見る上で重要なのが各記号や用語の意味です。
例えば上記の路線価では610Cや620Cといった数字とアルファベットがあります。
数字の部分は路線価1㎡あたりの価額です。
1,000円単位で表します。
アルファベットは借地権割合です。
借地権割合とは
貸した土地に借り主が建物を建てたケースで発生する「貸し手側が土地を自由に使用できる権利」のこと。
住宅地では6~7割・商業地では8~9割といったように地価が高い地域ほど借地権割合が高くなる傾向があります。
仮に路線価図に書いてある数字が620Cであれば、価額は1㎡あたり62万円の土地で、借地権割合は70%を表しています。
記号 | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
また路線価図の上部には各記号の意味が載っています。
上記の図の赤枠で囲まれた部分には特に記号がないため、普通住宅地区です。
路線価がないときは倍率方式で相続税評価額を算出する
倍率方式とはは固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率をかけて相続税評価額を算出する方式です。
路線価は主要な道路に面した街路1㎡あたりの価額のことで、かならずしも全ての土地が路線価図に対応しているわけではありません。
該当地の路線価を調べてみても路線価図がないときは、倍率方式で相続税を求めましょう。
倍率方式も相続税路線価と同様に「国税庁 路線価」とインターネットで検索します。
国税庁の路線価図・評価倍率表の画面で該当地の都道府県をクリック。
すると以下の画面が表示されるので、「路線価図」を選択します。
例として岐阜県各務原市の倍率表をチェック。
ページを飛ぶと以下の赤枠で示された「この市区町村の評価倍率表を見る」という欄が表示されるので、選択します。
以下のような倍率表を見ることができます。
赤枠の「路線」は路線価がそもそもあることを表しています。
比準とはは周辺地域に「路線価を参考に価額を決めていますよ」という意味。
「1.1」といった数字が表示されている地域は、固定資産税評価額を1.1倍したものが相続税評価額になります。
仮に固定資産税評価額が2,000万円の更地があれば、相続税評価額は1.1倍をかけた額の2,200万円です。
相続税路線価を使った相続税評価額の計算方法
調べた路線価から実際に評価額を計算する方法を以下の2パターンで紹介します。
- 1路線に接する場合
- 2路線に接する場合
詳しく見ていきましょう。
1つの路線に接する場合の計算方法
路線価を計算するときは奥行き価格補正率を路線価に掛ける必要があります。
単純に「路線価×宅地面積」ではないということに注意してください。
奥行価格補正率とは道路からの奥行の長さに応じて路線価を調整、減額する割合のこと。
奥行きの狭い土地は他の土地と比べて利用価値が低いとされるため、補正率のもとで相続税評価額が低くなります。
(参考: 国税庁 奥行価格補正率表)
【計算方法】
路線価×奥行価格補正率=1㎡当たりの路線価
1㎡当たりの路線価×地積(土地面積)=宅地の相続税評価額
仮に普通住宅地域内の路線価100Cの宅地で奥行が30m、土地面積500㎡の宅地の相続税評価額は4,900万円です。
2つ路線に接する場合の計算方法
土地が角地の場合は2路線に接するため、2つの路線価を使って評価額を求めます。
実際に計算していく流れは以下の通りです。
- 正面路線を決定する
- 1㎡あたりの評価額を計算する
- 1㎡あたりの評価額に面積をかける
順番に流れを見ていきましょう。
①はじめに正面路線を決定する
2つの路線価に接している宅地の場合、路線価をそれぞれ正面路線価、側方路線価と呼びます。
- 正面路線価…奥行価格補正率を乗じて計算した路線の価格が高い方
- 側方路線価…奥行価格補正率を乗じて計算した路線の安い方
仮にA、B2つの道路、それぞれの路線価が100C、102Cの普通住宅地域内の角地があるとします。
A路線 | B路線 | |
---|---|---|
路線価 | 100C | 102C |
奥行 | 20m | 30m |
奥行価格補正率 | 1.00 | 0.98 |
- A路線:10万円×1.00=10万円
- B路線:10万2,000円×0.98=9万9,960円
A路線>B路線なので、正面路線はAに決定。
もし10万円と10万2,000円という路線価だけ見て、正面路線をBに設定してしまうと、その後の計算がすべて誤りとなるので注意してください。
②1㎡あたりの評価額を算出する
2路線に面する土地の1㎡あたりの価額は正面路線価+(側方路線価×側方路線影響加算率)で求めます。
側方路線影響加算率表は地区区分に応じて以下のとおりです。
(参考:国税庁 側方路線影響加算率表)
上記の例では正面路線はAだったので、もう一方の側方路線であるBの影響を求めます。
奥行価格補正率を乗じたBの路線価9万9,960円に普通住宅地区で角地の加算率0.03をかけると、2,998円(円未満切り捨て)です。
ここで①、②で求めた値を足し合わせます。
正面路線A(価額10万円)…①
B路線の影響(2,998円)…②
①+②より、10万円(正面路線価)+2,998円
=10万2,998円
1㎡あたりの土地評価額は10万2,998円という結果になりました。
③1㎡あたりの評価額に土地面積をかける
1㎡あたりの土地評価額に土地面積をかければ相続税評価額の算出できます。
10万2,998円×600(㎡)
=6,179万8,800円
相続税評価額は6,179万8,800円です。
路線価や公示地価(基準地価)、実勢価格の差は評価額の新旧
おさらいですが、路線価と公示地価(基準地価)、実勢価格の主な用途は以下のとおり。
- 路線価…相続税や贈与税の算出用
- 公示地価(基準地価)…土地の純粋な価値を示し、金融機関の担保評価の対象。
- 実勢価格…土地の取引価格や地価の変動を調べる対象
また評価時点の順を分かりやすく並べると以下のようになります。
(古い) 路線価≦公示地価(基準地価)<実勢価格 (新しい)
「路線価を1.25倍すれば公示地価の値に近くなる」というのはあくまでも参考程度。
評価時期の差を理解していれば「なぜ評価額の使い分けをするのか」というギモンの答えがわかります。
- 年後半には基準地価を参考にして、土地を担保に融資を受ける
- 実勢価格で地価の上昇または下落を毎月チェックする
上記のように使い分けるようにしましょう。
また「自分が調べたい土地価格には路線価が適している!」という方は、本記事を参考に路線価から評価額を算出してみてください。
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