手遅れになる前に!
空き家所有者が行うべき3つのステップ
今回は日本政策投資銀行を退職後、山口県に移住して地方での生活を送る「さかえる」氏にご寄稿いただきました。
テーマは「空き家所有者が今すぐやっておきたい3ステップ」。
空き家数が増加傾向の現在、空き家の持ち主も増えています。
しかし空き家を所有しても、わからない事だらけでは困ってしまうはず。
- 空き家を活用するにはどうすれば?
- 誰に相談したらいいのか?
- 空き家の整理は自分でするべき?
自身も空き家解体作業を体験したことのあるさかえる氏が、空き家活用の心構えを教えてくださいました。
せっかくの家を負動産にしないために、事前に備えておきましょう。
さかえる 氏
平成元年生まれの30歳、神奈川県横須賀市出身。
「1度きりの人生、30代の気力・体力溢れる時間は本当に労力を求められているところで使いたい」という思いが高まり
6年半勤めた日本政策投資銀行を2018年に退職し、山口県の島に移住。
行政からの業務委託により島内6集落(人口360人、高齢化率70%)の活性化に携わりつつ、 個人事業主としても狩猟や草刈り、空き家の解体からブログ、動画制作、講演、コンサル、DIYワークショップ等 複数の収入の柱で細く長く生きていく実験をしているところ。
▷やっているお仕事について: https://yutaiki.com/column/work-2018-2019
▷なんで銀行員やめて地方移住したの?: https://yutaiki.com/notice/tjtv
ブログ :https://sakaeruman.com
Twitter: @sakaeruman
Facebook:https://facebook.com/daigo.sakae
HTML名刺: https://html.co.jp/sakaeruman
2033年には3軒に1軒が空き家になると言われる時代。
空き家問題は「自分には関係ない」と思っているあなたにとっても、実は身近な問題かもしれません。
お盆や正月だけ一時的に帰っている場所が残りの11ヶ月は使われていない…などということはありませんか。
それ、立派な空き家です。
放っておくと大きな負の遺産になる空き家をどうすれば良いか…。
全世帯中の1/3がすでに空き家になった田舎で生活する筆者が「転ばぬ先の杖」としてお伝えしたいことを解説します。
空き家を持ち続けるリスク
空き家の維持管理コストは多額
空き家を所有していると
- 維持費と毎年の固定資産税
- 引き継ぎ時の贈与税や相続税
- 年間の水道光熱費
など、かかる費用が相当な額になります。
また、意外と馬鹿にならないのが「草刈り」にかかるコスト。
田舎だと、夏場の草刈りを放置すれば森の一部と見間違えるほど酷い状態になることもあります。
そうなると近隣の迷惑になりかねません。
家は「究極の粗大ゴミ」になり得る
活用を先送りすると、空き家を取り壊すしか選択肢がなくなることがあります。
しかし、空き家の解体に数百万円かかるケースも稀ではありません。
筆者も空き家の解体作業の経験がありますが、とてつもない労力を必要としました。
家が大きければ大きいほど捨てるものの数が増えます。
さらには解体にかかる日数も伸びることに…。
その結果、コストも大幅に増加してしまうのです。
日本の田舎では、空き家は既に
- 壊すしかない
- タダでも引き取り手がいない
という状況にあります。
それに加え、解体作業も追いついていません。
空き家に関しては、とにかく早め早めに動いていくことが必要です。
空き家は使いたい人に使ってもらう
求められているのは「使える空き家」
解体が追いつかない状況でも「使える空き家」は多くの人に求められています。
しかし昨今、地方への移住希望者が増加する一方すぐに使える空き家が少ないのが現状です。
「使える空き家」は引く手数多だが「貸せない空き家」が多い
空き家と言っても
- ボロボロで使い物にならない家
- 掃除すればすぐ入居できる家
まで色々な状態のものがあります。
中でも一番多いのが「すぐ使えるものの家財一式がまだ残っていて貸せない家」です。
100軒空き家があれば、半数の50軒以上がこの状態と言っても過言ではありません。
この状態の家は5年〜10年すると痛んでしまいます。
そうなると「使い物にならない家」にすぐランクダウンしてしまうので注意しましょう。
借りる人がDIYできる選択肢を作る
DIYという選択肢を知っておくだけで、空き家を使ってもらえる可能性が一気に上がります。
DIYとは「Do It Yourself」の略で「セルフリノベーション」と同義で使われる言葉です。
改修費は業者に頼むと高額になるケースも。
しかし借主に現状渡しできれば改修の手間も省け、改修費カットに繋がります。
DIY可能な契約で原状回復義務を回避通常の賃貸借契約の場合は原状回復義務があるため、借主負担の改修は現実的に困難。
ですがDIYが可能な契約形式にすれば、家に傷みがあっても借主が自由に改修可能です。
「DIY型賃貸借のすすめ」(国土交通省)というマニュアルが出されています。
トラブル防止のために、一度チェックしましょう。
借主の家賃削減の代わりに家財を片付けてもらう
DIY以外にも、家を借りる人に家財を片付けてもらう選択肢もあります。
いわゆる「現状渡し」です。
その分、アドバンテージとして家賃を低く設定。
賃料収入は下がりますが、家財処分による時間とお金のコストを消費する必要はありません。
あるいは、片付けのコストを家主が負担することができれば、より借りてくれる人が見つかりやすくなるでしょう。
柔軟な賃貸契約で、空き家を借りてもらえる可能性を広げてみましょう。
ではここから「空き家所有者がやっておきたい3つのステップとプチノウハウ」について紹介していきます。
<STEP1>まず行政を含めた相談先を見つける
空き家問題は一人で抱え込まないのが吉
貸したいと思っても壊すしかない物件を「とりあえず放置」は危険です。
まずは身近な人を中心に色々な人へ相談してみましょう。
活用が難しいと言われる空き家問題だからこそ、特定の相談先だけに頼らず様々な側面からサポートしてもらうことが必要です。
【相談先①】行政の担当者
まず行政の「空き家バンク」「移住定住」の担当者に相談してみましょう。
昨今の地方創生・地方移住の流れを受けて、行政の担当者が空き家の情報を一元的に管理している場合があります。
その場合空き家再生を手掛ける会社・個人を紹介してくれる可能性もあるので、最初に連絡を試みるべきです。
しかし、行政が間に入る物件は
- 状態が良い
- 家財の片付けが終わっている
という優良物件のみというケースが多いです。
状態が悪かったり家財が残っている場合は、別の対応が必要になることも覚悟しておきましょう。
【相談先②】お寺・神社
- 誰かに貸したいと思っている
- 空き家のこれからに悩んでいる
こんなときに実は最も力になってくれるのが、地域の人と情報が集まる「お寺」「神社」です。
借りたい人や活用したい人に情報を共有してくれる可能性があるので、空き家の情報はきちんと伝えておきましょう。
その際に鍵を一緒に預けたり「できれば誰かに貸したい」という旨も併せて伝えることをお勧めします。
【相談先③】空き家周辺の親戚
空き家周辺に親戚がいる場合には、地域の自治会に相談してもらいましょう。
自治会長などが情報を把握することで、情報がより行き渡りやすくなります。
行政やお寺、神社のみならず地域にも相談してみることが大切です。
【相談先④】SNS上の協力者・支援者
インターネット・SNSを使って空き家がある地域の「地域おこし協力隊」や「集落支援員」を探してみましょう。
TwitterやInstagram、Facebookで検索すると活用できる空き家を探している人と直接繋がれるかもしれません。
SNSには空き家のリノベーションやボロ物件再生が専門の大家さんもたくさんいます。
<STEP2>出来る内に少しずつ片付ける
今使っているその家、5〜10年後も確実に使うと言えるでしょうか。
少し先の未来に使われなくなる可能性があるのなら、可能な範囲で少しずつ片付けることを強くお勧めします。
業者ナシで短期間の片付けは不可能
家の中には自分が思った以上のモノが収納されています。
それらを業者の力を使わずして短期間(数日〜1週間程度)で片付けるのは実質不可能と言えるレベルです。
- 大きな荷物を運ぶ
- 大量にある衣類や布団を処分
- 思い出を整理
- 分別しながら廃棄
など、処分にもかなりの手間がかかります。
使わないモノは捨て、家の中をすっきりさせていきましょう。
後回しにしていると、結局自分の首を絞めることになります。
必要なコストはしっかり出して解体損を回避
家財処理を業者に頼んだ場合、その費用は一般的な大きさの一軒家でも数十万円ほど。
ですが、費用をケチることで解体費の数百万円がのしかかる可能性が高まります。
仮に数十万円を支出したとしても、空き家を貸せた場合には
- 家賃収入で費用回収
- 空き家の劣化防止
- 将来的な売却や譲渡で更なる収益化
といったことも十分考えられます。
<STEP3>空き家の売却・譲渡を検討して解体を回避
修繕・売却・譲渡で有効に利活用
家を壊すタイミングは物件の管理状況次第です。
人の住まなくなった空き家は痛みの進行が驚くほど早くなります。
空き家を色々な人に使ってもらいつつ
- 修繕を重ねて解体を先延ばしにする
- うまく利活用してくれる人に売却・譲渡する
などの選択肢もきちんと検討するべきです。
家に需要を持たせて粗大ゴミにしない
使われているうちは良いのですが、肝心なのは使われなくなった後です。
その家は
- 今後需要があるのか
- 誰かに使ってもらえないか
真剣に考えるべき時が迫っています。
誰も引き取り手のない「粗大ゴミ」にするもしないも、持ち主の意思次第です。
家をマイナスの資産として意識することもこれからは必要になるのではないでしょうか。
例えば、家を譲ると同時に解体費を事前に渡す選択肢を持っておくのも大事です。
「タダでいいからもらって欲しい」そんな家が日本の田舎には溢れつつあります。
家は使ってくれる人がいてこそ価値あるもの
ただ空き家を持ち続けてもコストがかさむだけですが、「すぐ使える空き家」には需要があります。
空き家を持ったら行うべき3つのステップを振り返りましょう。
- 空き家活用について誰かに相談する
- 家は少しずつ片付けて、急ぐなら業者に頼む
- 空き家は売却・譲渡して有効に利活用
家は欲しい人がいてこその資産です。
あなたの家の価値をどう持続させるか、どんな価値を見出せるか真剣に向き合ってみましょう。
そうすれば、他の賃貸物件にも見劣りしない魅力的な物件になるはずです。
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